"あんたの金なら一滴も飲まない" 第11話
のどん底
翌の午、私は藤井さんのアパートを訪ねていた。
静かな宅のれにある、築ほどの階建てアパート。呼び鈴を鳴らすと、作業着姿の藤井さんがすぐに顔をした。玄関のタタキには、すでにガムテープで封をされた段ボール箱がいくつも積まれていた。
「片付けの最で、お茶もせませんが」
申し訳なさそうに招き入れられた畳のダイニングキッチンは、殺景という言葉がぴったりだった。カーテンはすでにされ、暗い部の真んに置かれたさなコタツのに、荷造り用の紐とハサミが無造作に置かれている。
「急にお邪魔してすみません。……どうしても、もう度お聞きしたいことがあって」
私はち話のまま、藤井さんに向きった。
「昨、母と話しました。母がなぜ藤井さんの牛乳を受け取り続けていたのか、しだけ分かった気がします。……でも、やっぱり分からないんです」
藤井さんはを止め、私の目を見つめた。
「母にとって都が良かったのは分かります。でも、藤井さんにとっては何だったんですか? 母のが儘に付きって、毎自分のおを払って、見返りなんて何もないのに……どうして以も続けられたんですか。『止めを見失った』なんて、そんな曖昧な理由で納得できる額じゃないはずです」
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藤井さんは困ったように線を泳がせ、それからさく息を吐いた。
「……美さんは、鋭いですね」
藤井さんはコタツのの荷物をし端に寄せ、私に座るよう促した。自分も畳のに腰をろし、節くれだった指で膝のの布を撫でた。
「、健先輩がくなったのことなんですがね。……私、の底にいたんです」
く、静かな告だった。
「あののに、妻がていきましてね。協議婚でした。息子も妻についてって、私はぼっちになった。それだけならまだしも、会社で担当していた設計のラインできなトラブルがありましてね。私が全責任を取らされる形で、現の窓際部署へばされたんです」
藤井さんは自嘲気に元を歪めた。
「を過ぎて、族も失い、仕事のプライドも失った。毎晩、この部で酒をんで、何のためにきているのか分からなくなっていました。いっそこのまま消えてしまっても、誰も困らないんじゃないかって本気でっていた頃でした」
そんな折に、病院の父から呼びされたのだという。
「先輩はもう声もかすれて、骨と皮ばかりになっていました。でも、私の目をまっすぐ見て、あの万円を握らせてきたんです。『修、おしか頼めるやつがいない。の朝飯を頼む』って」
藤井さんの声が、微かに震えていた。
「誰も私を必としていなかったに、あのは……ぬ際の健先輩だけは、私を頼りにしてくれたんです。おなら最までやってくれるはずだって、私を信じて託してくれた。それが、どれほど嬉しかったか……」
部の隅に積まれた段ボール箱が、午のを浴びて黄く浮かびがっていた。
「半が経って、お母さんに『止めますか』と話をした、お母さんが『もうし続けてほしい』っておっしゃったでしょう。……正直に言います。あの、救われたのは私の方だったんです」