"私を捨てるはずだった夫" 第15話
ヶの契約
曜の朝は、つないれだった。
空気がキンと張り詰め、ベランダのアルミサッシがえ切っていた。
午半。
スーツを着た直が、畳半の部からてきた。
ネクタイを締め、ビジネスバッグをに持っている。
私はキッチンで、自分の分のトーストを焼き終えたところだった。
バターナイフを置き、振り向く。
直は玄関へ向かわず、キッチンカウンターのにった。
ポケットからスマートフォンを取りし、画面をタップした。
通話ボタンを押し、スピーカーにはせず、に当てる。
ワンコール、ツーコール。
『はい、アパマンショップ荻窪でございます』
受話器の向こうから、若い男性員のはつらつとした声が、狭いリビングに漏れ聞こえた。
直は喉を度鳴らし、背筋を伸ばした。
「あ、お世話になっております。です。……曜にご連絡いただいた、荻の物件の件ですが」
私は息を止めて、直の横顔を見つめていた。
直の線は、窓のの青空のどこか点に向けられていた。
「……申し訳ありませんが、今回の再契約は見送らせてください。はい。の方に回していただいて結構です。……ええ、ご迷惑をおかけしました。失礼します」
通話が切れた。
プツッという子音が、静まり返った部にさく響いた。
直はスマートフォンをスーツのポケットにしまい、く、肺のの空気をすべて吐きすように息をついた。
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それから、バッグのから本のの鍵を取りした。
この居の、鍵だった。
それを、玄関の靴箱のに、カチャリと置いた。
「……キャンセルしたよ」
直が言った。
声は落ち着いていたが、どこか憑き物が落ちたような、議なるさがあった。
「そう」
「俺の志で断った。おのせいじゃない」
直は私を見て、微かに元を緩めた。
「ここに、もうしみたい」
「もうしって、どれくらい?」
直はし困ったように眉をげ、を掻いた。
「……分からない。半かもしれないし、かもしれない。もしかしたら、また息が詰まって、お互い耐えられなくなるかもしれない」
「無責任ね」
私が言うと、直は「ああ、けないよな」と苦笑した。
「でも、次は逃げないよ。ていくにしても、留まるにしても、ちゃんと話しって、で決めたい。……だから、もうしだけ、ここにいていいか」
私は靴箱ののの鍵を見つめた。
朝のを浴びて、属の表面がキラリとっていた。
、婚姻届をしたのような揚はどこにもなかった。
ただ、い荷物を背負い直す覚悟のようなものが、静かに元に沈殿していくのをじていた。
「……ヶね」
私が言うと、直が「え?」と顔をげた。
「まずは、ヶ。お互い同居のルールのままで、様子を見ましょう。ヶ経って、やっぱり無理だとったら、そのはまた考えればいいわ」
直は呆気にとられたように私を見つめていたが、やがて、喉の奥から絞りすように笑った。
「ヶ更か。定期借契約みたいだな」
「そうよ。文句ある?」
「ないよ。分すぎるくらいだ」
直は靴箱から革靴を取りし、玄関に腰掛けて靴紐を結んだ。
ちがり、ドアノブにをかける。
そして、、毎朝繰り返されてきて、このヶすっかり途絶えていた言葉を、しぎこちなくにした。
「……ってきます」
私はシンクのにったまま、濡れたをタオルで拭いた。
「ってらっしゃい。駅、事してるから気をつけて」
ガチャリとドアがき、閉まった。
階段をりていく直の音が、軽やかに響いて、ざかっていった。
私はトーストを皿に載せ、テーブルに運んだ。
窓から差し込むのは、しだけ温かかった。