みかん小説
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"私を捨てるはずだった夫" 第5話

ノートの数字とえたトースト

暗いリビングの境目に、直はったままかなかった。

私ののには、かれたままの学ノートと、ヶの付が印字された型蔵庫の領収があった。

喉の奥がカラカラに渇いて、唾をみ込むことすら痛かった。

「……由美」

もう度、直が私の名を呼んだ。

その声には、秘密を見咎められた揺よりも、ひどくい諦めのようなが混じっていた。

「これ」

私はノートを持ちげた。

の端が、指先の震えにわせてカサカサとさく鳴る。

「荻窪の部で、で暮らすための計算だったの?」

直は何も言わず、壁際に寄せてあった段ボールのにゆっくりと背を預けた。

目を伏せ、の目をじっと見つめている。

言い訳も、嘘も探していないようだった。その沈黙が、何よりも雄弁に事実を肯定していた。

夜がけるまでの、私たちは言も交わさなかった。

直はリビングの敷布団に戻り、私は奥の畳で毛布を被って壁を見つめていた。

を澄ませても、リビングからは物音つしなかった。

彼が眠っていないことだけは、空気の張り詰め方で分かった。

午を回ると、向きの窓から青いが差し込んできた。

私は起きがり、まだ使い勝の分からないさなキッチンにった。

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段ボールからトースターを引っ張りし、昨買っておいたパンを枚入れてレバーを押しげる。

カチカチとゼンマイが回る乾いた音だけが、やけにきく響いた。

チーン、と甲い音が鳴る。

皿に載せたトーストと、インスタントのコーヒーをつ、段ボール箱のに並べた。

「起きてるんでしょ。べて」

直はすでに作業着のズボンを履き、敷布団を畳み終えていた。

無言で段ボールのに正座し、めかけたトーストにを伸ばす。

バターも塗っていないトーストを千切り、に運ぶ夫の顎のきを、私はったまま見ろしていた。

「万円」

私の声に、直のが止まった。

「私への送、万っていてあったわね」

直は線をげず、トーストのを指先でいじった。

「……おのパート代とわせれば、あのLDKの賃は払えないにしても、美咲とで暮らすワンルームくらいは借りられるとったんだ」

「随分と親切ね」

皮肉が、刃物のように鋭くからびしていった。

「賃万千円、費万千円、費万千円。自分の活費をきっちり切り詰めて、余った分を妻に渡す。自分はなんて誠実な夫なんだって、そのノートをきながら満してた?」

「そういうつもりでいたんじゃない」

直が初めて、しだけ語気をめた。

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だが、すぐにその勢いは萎み、力なく息を吐きした。

「ただ……急にいなくなって、おの活が破綻するのだけは避けたかった。美咲の学費も、俺のボーナス座から引き落とされるように続きを調べるつもりだった。全部放りして逃げるような真似は、したくなかったんだよ」

「それが逃げるってことじゃないの!」

わず鳴っていた。

自分の声が、狭いリビングの壁に反響してに痛かった。

「おさえ払えば、活費の計算さえっていれば、緒に暮らしてきた妻に何も言わずに消えてもいいわけ? 私が番傷つくのは、活費がりなくなることだとでもってたの?」

直は俯いたまま、固く唇を結んだ。

目のの段ボールには、彼が几帳面に引いた赤ペンの線が残るノートがかれたままだ。

「勝にで決めて、勝にで完結させて……。私、あなたにとって何だったの? ただの扶養族? 毎のお当を振り込んでおけば文句言わない、のかかる同居だったの?」

私の問いかけに、直は答えなかった。

え切ったトーストは、半分残されたまま、段ボールのでく乾き始めていた。

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