"寝室にカメラを隠した夫と1億8000万円の遺産" 第16話
私の声はし震えていたかもしれない。
でも議と涙はなかった。
「それがあなたの欲しかったものなんだよね。私が私を信じなくなること」
正斗は何も答えなかった。
ただ、彼の方がさく震えているのだけが見えた。
先が静かに会話を引き取った。
「島さん。あなたの為は単なる夫婦のプライバシー侵害にとどまりません。奥様の財産を当に管理しようとした確なが、通信記録や義母の智子さんとのメッセージ履歴から確認されています」
正斗はビクッと体を震わせた。
「母さんとのメッセージまで……」
正斗は完全に打ちのめされたように、背もたれにく寄りかかった。
先はたい声で宣言した。
「もはや夫婦関係の修復は能です。レイ奈さんは婚をく希望しており、財産分与についても、あなたの個な債務は考慮されません」
正斗は虚ろな目で先を見た。
「そんな……俺はどうなるんだ?」
「それはご自で弁護士に相談してください」
先は徹に言い放ち、面会の終を告げた。
私はちがり、度も振り返ることなく応接をにした。
正斗の言い訳も懺悔も、もう私には必なかった。
事務所をると、はまだるかった。
空気がしたく、呼吸をすると胸の奥まで鮮な酸素が入り込んでくるのをじた。
広告
これで本当に、全てが終わったのだ。
あのカメラが見つかったから今まで、私は恐怖と混乱ので必に真実を探し求めてきた。
夫の裏切りをり、義母の酷さをり、族というが完全に壊れた。
でも私は、自分自を取り戻した。
自分の目で見て、自分ので考え、自分のでこの所まで歩いてきた。
私はスマートフォンを取りし、画面を見た。
正斗も義母も、もう私を脅やかすことはできない。
これからは私が、私のの主導権を握るのだ。
私は顔をげ、駅へ向かって歩きした。
取りは軽く、のには静かな決が満ちていた。
もう誰も、私を狂わせることはできない。
私には最まで奪われなかった、自分を信じる力があるのだから。
先の事務所での面会から、数が過ぎた。
正斗からは、あの面会以度も連絡が来ていない。
彼はようやく、自分の嘘が全て見透かされ、私にすがる余が完全に失われたことを悟ったのだろう。
婚調の申しては正式に受理され、正斗の元にも通が届いているはずだ。
私はホテルの部を引き払い、しい賃貸マンションの契約続きをめていた。
叔母の遺産にをつけることなく、自分の料だけで活を再建する。
会社の仕事は順調で、以のようなや確認作業への異常な執着は完全に消えっていた。
広告
私が自分の判断力を信じられるようになった証拠だった。
あるの夕方、会社からの帰りにスマートフォンが鳴った。
画面を見ると、見らぬ固定話の番号だ。
私はち止まり、通話ボタンを押した。
「はい。島です」
『レイ奈さん。私よ』
にび込んできたのは、義母・智子さんの声だった。
私は瞬、話を切ろうとした。
しかし、彼女が何を言うのか最まで聞いておく必があるとい直した。
「お義母さん、どうされましたか?」
『あなた、弁護士なんててて婚だなんて、正斗から聞いたわよ。あの子今すごく落ち込んでるの』
義母の声は、以のような威圧はなく、し震えているように聞こえた。
まさかの事態に直面し、息子が自己破産の危にあることをったのだろう。
「そうですか」
私は淡々と答えた。
『そうですかって。あなたたいわね。夫婦なんだから助けうのが当たりでしょう』
私は静かな声で問い返した。
「夫婦なら、私の寝にカメラを仕掛けて、私が狂っていくのを待っていてもいいんですか?」
私の問いかけに、義母は瞬言葉を失った。
『あ、あれはあの子もどうかしてたのよ。おのことで追い詰められて』
「お義母さんは、その計画をっていましたよね」
『らないわよ。私はただあの子が配で……』
「『本が信じればそれでいい』」
私が正斗のメッセージの文面を引用すると、話の奥で義母が息をむ音が聞こえた。