"寝室にカメラを隠した夫と1億8000万円の遺産" 第15話
先が静かな声で言った。
「彼は今、法に完全に追い詰められています。財産へのアクセスは断たれ、借の返済期限は迫っている。彼に残された唯の希望は、あなたを丸め込んで委任状をかせることだけです」
私はお茶を置き、先を見た。
「分かっています」
「になる必はありません。彼の嘘を事実でつずつ潰していけばいいのです」
午。
事務所のドアがく音がした。
事務の案内に続いて、正斗が応接に入ってきた。
連れ添った夫の顔は、たった数週で見るもないほどやつれていた。
目のには濃いクマができ、スーツはどこかくたびれて見える。
彼は私を見ると、ほっとしたような、すがるような表を作った。
「レイ奈、会いたかった」
正斗は私の向かいの席に座り、を乗りすようにして言った。
私は彼の目を見つめ返し、静かに答えた。
「私はあなたに会いたくなかったわ」
正斗の表が瞬だけこわばった。
「そんなこと言わないでくれ。俺はおの体調が本当に配で……」
「その言葉やめて」
私は正斗の言葉をたく遮った。
「私のために寝にカメラをつけたの?」
正斗は言葉に詰まり、線を泳がせた。
先が机のに枚の類を置いた。
それは正斗の事業用端末の通信記録だった。
「島さん。あなたが寝の映像を部からリアルタイムで監していた記録は、すでに警察から示されています」
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先の徹な声が応接に響いた。
正斗の顔から完全に血の気が引いていくのが分かった。
応接は、凍りついたような沈黙に包まれた。
正斗は机のに置かれた通信記録を見つめたまま、微だにしない。
彼の『妻を配する夫』という仮面は、物理な証拠のに完全に引き剥がされた。
しばらくして、正斗は掠れた声でをいた。
「あれは……」
彼は私を見げた。
「あれは、おが夜に苦しんでいないか、状況を確認するためだったんだ」
私はその見え透いた嘘を聞き、わず乾いた笑いを漏らしてしまった。
「誰の状況を? 私の状況を、私に黙って記録して、私が自分を信用できなくなるように使うためでしょう」
正斗は顔をしかめた。
「そんな単純じゃない」
彼は線を落とし、両で顔を覆った。
「じゃあ何なの? 私を狂わせたかったわけじゃないなら、何のためにあんなことをしたの?」
私の問いかけに、正斗はい沈黙で答えた。
やがて彼は顔を覆っていたをろし、諦めたようにさな声で言った。
「借があるんだ」
その言葉を聞いて、私はがしも揺れないことに気づいた。
「ってるわ」
私の即答に、正斗は驚いたように顔をげた。
「え?」
「ええ。あなたが投資で失敗して顧客から逃げられ、数千万円の保証債務を抱えていること。今はもう全部ってる」
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正斗の顔が見る見るうちに絶望のに染まっていく。
彼は私が何もらないとい込み、このでもまだ隠し通そうとしていたのだ。
「相続資産があればて直せたんだ」
正斗は絞りすように言った。
「だから私に管理できないとわせて、委任状をかせようとしたの?」
「俺の方がうまく管理できるとったんだ」
私は正斗の言葉を遮るように、静かにしかしはっきりと告げた。
「そこじゃないわ」
「え?」
「誰がうまいかじゃないの。誰のかの話をしているの」
正斗はを半きにしたまま、私を呆然と見つめた。
私は彼を真っ直ぐに見据えた。
「あなたは私を守ろうとしたんじゃない。自分の借から自分を守ろうとしただけ。そのために私を犠牲にした」
正斗は突然声を荒らげ、机を叩いた。
「夫婦だろ! 俺が自己破産したら、おだって困るはずだ!」
しかしその声に力はなかった。
「夫婦だから、寝にカメラをつけていいの? 夫婦だから、私が自分を信じられなくなるまで追い詰めていいの?」
私の問いに、正斗は再び言葉を失った。
私はく息を吸い込み、この半ずっとのに溜め込んでいたいをにした。
「私、この半、自分が壊れていくって本当にってた」
正斗は目を伏せたままだ。
「会社で数字を確認しても、また見る。の鍵を閉めても、また見る。
あなたが『最忘れっぽい』『疲れてる』と言うたびに、私、本当に? って自分に聞いてた」