"寝室にカメラを隠した夫と1億8000万円の遺産" 第5話
彼は静さを保つように、静かに尋ねた。
「ご主には連絡しましたか?」
私は首を横に振りながら答えた。
「まだです。話しようとしたんですが、なぜか指が止まってしまって……」
先は力い声で私を肯定した。
「いい判断です。ではそのまま何にも触らず、すぐに警察へ相談してください」
先の声は、いつもの穏やかな響きから鋭い実務のものに変わっていた。
「警察を呼ぶに、誰が関係しているかまだご自で決めないでください」
私は先の言葉に頷き、姿勢を正した。
「わかりました。すぐに連絡します」
話を切り、私は震える指で〇番を押した。
警察をに呼ぶなんて、私のので初めてのことだった。
正斗に内緒で警察を呼べば、もう元の夫婦活には戻れないかもしれない。
それでも私の直は、ここでち止まってはいけないと激しく告げていた。
通報から分ほどで、の制警察官が到着した。
坂本さんが玄関で事を説し、緒に寝へと案内してくれた。
若い方の警察官がメモ帳を取りし、私に向き直った。
「奥さん、確認のためにしお話を伺いますね」
私は頷き、彼の質問に答え始めた。
もうの配の警察官は、ベッドのに潜り込んで現の状況を確認している。
「確かに、カメラと集音マイクのようなものがテープで固定されていますね」
広告
配の警察官はそう言うと、カメラを取りして撮を始めた。
フラッシュの鋭いが何度もり、現の状況が写真に記録されていく。
そのを見るたびに、自分の活が暴かれているようで胸が苦しくなった。
通り撮が終わると、警察官は袋をして慎に装置をし始めた。
彼はした部品を確認しながら呟いた。
「配線が繋がっているのは、かなり古い方の携帯端末ですね」
カメラ本体、マイク、そして黒い封筒が、次々と透な証拠品袋に入れられていく。
若い警察官が袋を持ち、私に声をかけた。
「奥さん、このを緒に確認してもらえますか?」
私は促されるまま、リビングのテーブルへ移した。
坂本さんは気を遣って帰ろうとしたが、警察官に引き止められた。
「発見者としてで調をお願いします」
坂本さんは頷き、リビングの隅にった。
テーブルのに置かれた黒い封筒のが、警察官のによってゆっくりとかれた。
からてきたのは、丁寧に折りたたまれた数枚のだった。
私はそれを見た瞬、全の血が逆流するような衝撃を受けた。
枚目は、に私が見ていたはずの、叔母の相続資産覧のコピーだった。
約億千万円の産や預が、細かくリストアップされている。
私は震える指でそのを指差した。
広告
「これ、私のものです」
警察官はメモを取りながら確認した。
「ご自の財産に関する類ですね。では、次はこちらです」
枚目のには、『委任状』というきな文字がかれていた。
委任者・島レイ奈、受任者・島正斗。
委任する事項の欄には、産の売却、預の引きし、あらゆる契約の代理権が並んでいる。
署名と押印の欄はまだで、きの段階であることが分かった。
『委任状枚あれば、俺が税も契約もやれる』
正斗のあの声が、再び私のの奥で鮮に蘇った。
単なる冗談や、配からた言葉ではなかったのだ。
さらに枚目のがてきた、私のは完全に震えを隠せなくなった。
それは、医療関に提するための相談用メモのようなきだった。
箇条きで、々しい言葉がいくつも並べられている。
『眠障害による極度の疲労』
『常な集力の』
『妻の財産管理に対するい』
『族による包括な支援が必』
私は言葉を失い、ただその文字を呆然と見つめるしかなかった。
『最ぼんやりしてるよ。忘れっぽくないか』
『本当に疲れてるんだ』
この半、正斗が私に繰り返し浴びせ続けた言葉の理由が、ここにあった。
彼は私が病気になっていく過程を、わざわざ文章にして準備していたのだ。
「何……これ……」
私のから、無識のうちにうめき声が漏れた。
警察官は類を丁寧に袋にしまいながら、私に尋ねた。