"優先的に妹さんと" 第14話
朱肉の横のボールペン
曜の午分。
私は信用庫の県庁支、その階にある融資管理課の片隅で、類の理をしていた。引き継ぎの挨拶を兼ねた研修のため、本本部に詰めていたのだ。
フロアには乾いたキーボードの打鍵音と、話応対の抑えられた声がく満ちていた。元のバインダーには、来から私が本格に査定を担当する企業の財務諸表が何枚も綴じられている。
数字の羅列に目を滑らせながら、私の識はまったく別の所を彷徨っていた。
ここからで分ほどれた、駅商のれ。
古びたビルの階にある産管理会社の会議。
真紀は今、そこに座っているはずだった。向かいには元同僚の佐伯さんと、喫茶の齢なオーナー、そして仲介業者の担当者が契約を広げているだろう。
テーブルの央には、真の朱肉と、黒いボールペン。
実印を押し、署名をした瞬、真紀の退職の半がの座へと移る。度と取り消すことのできない法な拘束力が、姉のこれからの数を決定づける。
元の腕計を見る。
分。
あと分。
私は無識のうちに、ペンを握る指先に力を込めていた。爪の先がくなるほどく握りしめ、喉の奥がカラカラに渇いていくのをじていた。
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やめさせなければならない。
そんな衝が、何度も喉元までせりがってくる。
オーナーに騙されているかもしれない。居抜きの設備に致命な隠れた欠陥があるかもしれない。そもそも、佐伯さんという共同経営者と本当に最まで並みが揃うのか。
いくらでも「止めるべき正当な理由」がに浮かんだ。話本かければいい。今すぐ「ちょっと待って、判を押すにその条項を確認させて」と割り込めば、姉は必ず躊躇する。姉はいつだって、私の忠告に抗えないのだから。
デスクの端に伏せて置いてあった私の私用スマートフォンが、にい音をてて振した。
ブブッ、ブブッ。
無質な震が、デスクの目を伝って私の腕に響く。
画面が点灯した。
表示された名は、『お姉ちゃん』だった。
臓が、喉からびしそうなほど激しくねた。
私はバインダーを置き、スマートフォンを掴むと、同僚にさく会釈をしてフロアをた。非常階段へと続くい鉄の扉を押しける。
ひんやりとしたコンクリートの空に、私のハイヒールの音が反響した。
息をえる暇もなく、通話ボタンをスライドさせてに当てた。
「……もしもし」
受話の向こうから、かすかな擦れの音と、誰かが類をめくるい音が聞こえた。
そして、さく息を吸い込む気配。
「由里?」
真紀の声だった。
し嗄れていて、かすかに震えていた。だが、かつて何かを決めるに私に助けを求めてきたの、あのすがるような頼りなさは、そこにはなかった。
私は踊りのすりをく握りしめ、静かに答えた。
「うん。聞こえてるよ」