みかん小説
本棚

"優先的に妹さんと" 第12話

分析か、応援か

曜の午。

残業をめに切りげて帰宅した私は、ダイニングテーブルのに類を綺麗に並べ直した。赤ペンでき込みをしたノートも冊、脇に添えてある。

真紀は定刻通りにリビングに現れた。昨夜とは違い、し緊張した面持ちで私の向かいの席に座る。

テーブルの真んに置かれた湯呑みから、ほうじ茶の湯気が細くちっていた。

「読んだよ」

私が切りすと、真紀の肩が微かにねた。

「……どうだった?」

姉の指先が、テーブルクロスをきつく握りしめているのが見えた。怯えている。また私が完璧な正論で自分を打ちのめすのではないかと、構えているのだ。

私は息をく吸い込んだ。喉の奥まで競りがってきた「絶対にうまくいかないからやめなよ」という言葉を、鉄の力で押し戻す。

そして、真紀の目をまっすぐに見つめた。

「真紀。数字の話をするに、つだけ聞かせてほしい」

「何?」

「真紀は今、信用庫の職員としての私の『分析』が聞きたいの? それとも、妹としての『応援』が欲しいの?」

真紀が息を呑んだ。

予もしていなかった問いかけだったのだろう。姉の丸い目が、戸惑いに揺れた。

「分析か……応援か……?」

「うん。もし応援してほしいなら、私は数字のことは何も言わない。『頑張ってね、お姉ちゃんならできるよ』って言う。でも、もし現実なリスクをりたいなら、プロとして容赦なく話す。

広告

どっちがいい?」

静寂がを包み込んだ。

計の秒針が、チク、タク、とを刻んでいく。

真紀は線を落とし、テーブルのの類を見つめた。数分、姉は何も言わなかった。かつての真紀なら、迷わず「由里の見を聞かせて」と丸投げしていただろう。

だが、真紀は自分のを見つめ、やがて顔をげた。その目には、迷いながらも自分で選ぼうとする志のがあった。

「……両方」

真紀が絞りすように言った。

「まずは、分析を聞かせて。由里がどう見てるか、プロとしてのごまかさない見が聞きたい。……そので、最にどうするかは、私が自分で決めるから」

胸の奥が、く震えた。

「わかった」

私は赤ペンのノートをいた。

「まず、結論から言うと、この計画のままならヶで運転資が底をつく」

を切交えず、淡々と、しかし極めて瞭に事実を告げた。

「客単価百円に対して、席数は席。の回転率を最に見積もっても、商はせいぜい万円。そこから豆の仕入れ、費、賃を引いたら、の件費は万円も残らない。もし蔵庫かエアコンが壊れたら、その点でショートする」

真紀の顔が青ざめていく。だが、私は容赦なく続けた。それが、分析を求めた姉に対する最限の敬だったからだ。

「き残るための最条件はつ。第に、昼のランチ需を取るための軽メニューの発。

広告

第に、造作譲渡料の減額交渉。あの設備なら、百万はすぎる。万まで叩けるはず。第に、佐伯さんとので、どちらが代表権を持ち、赤字がたの責任をどう分担するか、公証役で契約を交わすこと。仲良しごっこじゃ絶対に破綻する」

私はノートを閉じ、真紀のに滑らせた。

「これが私の分析。リスクは極めてい。成功する確率は、贔屓目に見ても割以だとう」

真紀は震えるでノートを受け取った。びっしりとかれた赤ペンの数字を、瞬きもせずに見つめている。

「……ありがとう」

真紀の声は微かに震えていたが、取り乱してはいなかった。

「全部、本当のことだよね」

「うん。数字は嘘をつかないから」

真紀はちがり、類とノートを胸に抱えた。

「晩、考えさせて」

「うん」

真紀が部に戻っていく背を、私はただ静かに見送った。

止めるための説得は、切しなかった。すべての事実を机のに広げ、選ぶ権利を姉のに渡した。

あとは、真紀自の問題だった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: