みかん小説
本棚

"優先的に妹さんと" 第11話

必とされない恐怖

「……由里?」

真紀がそうに私の名を呼んだ。

私はきかけたを閉じ、元の類に線を落とした。

かつての私なら、ここで即座に通りの「やめるべき論理な理由」を提示していただろう。姉を説得し、傷が浅いうちに撤退させ、自分の正しさを証してさせていたはずだ。

だが、それをやったら何が残る?

また真紀を「何も決められない無力な姉」の檻に閉じ込め、私は「優秀な保護者」の子に座り直すだけだ。

「……これ、預かってもいい?」

私のからたのは、自分でもなほどいトーンの言葉だった。

「え?」

「今すぐ適当なことは言えないから。ちゃんと目を通してから、の夜、返事する」

真紀は拍子抜けしたように目を瞬かせた。「ごなしに鳴られるとってた」とでも言いたげな顔だった。

「うん。……わかった」

真紀が部に戻った、私は類を持ったまま自分の部に入り、ベッドのに倒れ込んだ。

計の針の音だけが、やけにきく部に響く。

にした損益計算を見るまでもない。この計画は破綻している。半、いやければヶで資ショートを起こす。の厳しさをらない素がび込んで成功する甘い世界ではない。

止めるべきだ。妹として、族として、何よりおのプロとして。

「やめておきなさい」と、く、断固として首を横に振るべきだ。

広告

そう考が巡った瞬、私の胸の奥底で、ドロリとしたたい澱のようなが湧きがってきた。

――私は、本当に姉のために止めようとしているのだろうか?

背筋をたい悪寒が駆け抜けた。

私はベッドから起きがり、鏡のにった。そこに映っている自分の顔は、恐ろしいほど張っていた。

もし、真紀が私の静止を振り切ってを始めたら?

もし、あの優柔断で頼りなかった姉が、私の助けも借りずに、自分ので失敗を乗り越えてを軌に乗せてしまったら?

その、私は体、何者になるのだろう。

ので、幼い頃からの記憶が激しい濁流となって渦巻いた。

をした真紀を病する母の背。「由里ちゃんはお姉ちゃんより体が丈夫でがかからないね」と笑った父。しっかり者でいなければ、されない。誰かの役にち、誰かの面倒を見なければ、こので私の居所は失われてしまう。

「頼りになる子」という鎧を脱いだら、私には何が残るというのか。

私は、真紀が失敗することを恐れているのではなかった。

真紀が私を必としなくなることを、ぬほど恐れていたのだ。

真紀がで歩きし、で転び、でちがるようになったら、私の義は消えてしまう。姉が惨めにちすくんで、「由里、どうしよう」と泣きついてくる瞬だけが、私がこの世界で自分の価値を実できる唯の避難所だったのだ。

「最だ……」

暗ので、声が漏れた。

姉を依させていたのではない。姉の無力さに寄していたのは、私の方だった。

その事実の醜悪さに、胃が激しく痙攣した。吐き気を催すほどの自己嫌悪に襲われながら、私は朝が来るまで、度も目を閉じることができなかった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: