"優先的に妹さんと" 第6話
あなた自の見
真紀はダイニングの子を引いて、静かに腰をろした。
テーブルのに置かれた両は、指先が微かに張っていた。私はち尽くしたまま、姉の横顔を見つめていた。
「どういうこと?」
「カフェでね、将来の話になったの」
真紀はぽつりぽつりと、記憶を辿るように話し始めた。
「相澤さん、転勤がい仕事だから、結婚してもすぐにを買うつもりはないって言ってた。定までは賃貸で、の丈にった暮らしをしたいって。子どもについても、お互いの齢を考えたら、だけで穏やかに暮らす選択肢も考えてるって」
信用庫で宅ローンを常に扱っている私のは、即座に計算を始めていた。歳でなしの賃貸暮らしは、老の賃負担がすぎる。子どもを作らないなら、尚更どちらかが倒れたのリスクヘッジが必になる。
私のが、無識に「それはね」ときかけた。
真紀はそれを遮るように、さくを挙げた。
「そう言われたね、私、テーブルのでスマホを握りしめてたの」
「え?」
「バッグので画面をいて、由里にメッセージ打ってたのよ。『相澤さん、は買わない主義だって。どうう?』って。指が勝にいて、全文打ち終わってた」
真紀の唇が、自嘲気に歪んだ。
「でも、送信ボタンを押す直に、瀬さんの顔が浮かんだ。
広告
あのホテルで、相澤さんが言った言葉も。……だから、消したの。文字ずつ、全部バックスペースで消した」
真紀の息が震えていた。
「メッセージを消したらね、のが真っになったの。私、相澤さんに『真紀さんはどういますか? 持ち派ですか?』って聞かれたのに、何ひとつ答えられなかった。『ええと』って言ったきり、分も黙り込んじゃったのよ」
「……お姉ちゃん」
「過ぎた女が、自分のむの希望ひとつ、そので答えられないの。どうしてだとう? 私自がどうしたいかなんて、今まで度も考えたことがなかったからよ」
真紀は顔を覆った。指の隙から、漏れるような声が聞こえた。
「私はいつも、由里が『賃貸は損だよ』って言えば賃貸はダメなんだとい、『マンションの方が資産価値があるよ』って言えばそう信じてきた。由里が正しい答えをくれるから、私は自分で考えるのをやめてたの。楽だったから。失敗したくなかったから」
胸が締め付けられるように痛かった。
姉が依していたのではない。私が、姉から考える会を奪い続けていたのだ。
「相澤さん、私の様子を見て、全部気づいたみたいだった」
真紀はをろし、赤くなった目で宙を見つめた。
「りもしなかったし、馬鹿にもされなかった。ただ、すごく困ったように笑ってね。『真紀さん。
広告
誰かに相談するのは悪いことじゃありません。でも、私はまず、あなた自の見が聞きたいんです』って」
『あなた自の見』。
その言葉のみに、私は打ちのめされていた。
「私、何も言えなかった。悔しかったけど、言も返せなかった。……だから、お会計のに言ったの。『私にはまだ、誰かとしい活を始める資格がありません。ごめんなさい』って」
真紀はちがり、自分の部へと歩きした。
その取りはかったが、どこか、の敷いたレールから自分のでりたのような、かすかな輪郭を取り戻しているようにも見えた。
リビングに残された私は、え切ったテーブルのに線を落とした。
私は姉を助けていたのではなかった。
姉のを私の全基準で検閲し、姉の選択肢を奪うことで、「頼りにされる完璧な妹」という居所を守っていただけだったのだ。