"優先的に妹さんと" 第5話
普通ってどのくらい
あのお見いの破綻から週、私たちの部には奇妙な静けさが居座っていた。
朝は同じに起きて、同じ洗面台で顔を洗い、同じトースターで焼いたパンをべる。けれど交わす言葉は「お先に」「醤油取って」といった、最限の業務連絡のようなものばかりだった。
かつての私たちなら、週末のどちらかは必ず緒にスーパーへ買いしにき、夕飯の献を相談していた。だが曜の午、真紀はでかけていった。
玄関で見送った、姉が着ていたのは、見覚えのないくすんだミントグリーンのニットだった。
胸の奥が、ちくりと痛んだ。
いつもなら、を買うは必ず私に写真を送ってきた。「これ、代半に見えるかな?」「丈、すぎない?」と。私はそのたびに「素材がっぽいからやめなよ」とか「そっちよりネイビーの方が無難」と返していた。
姉が私のらないを着て、私のらない所へく。
たったそれだけのことが、元をすっとすくい取られるような細さを連れてくる。
真紀がかけた、私はリビングの掃除をかけ、たまっていた洗濯物を畳み、平のための作り置きを作った。信用庫の融資査定に関する参考をいて机に向かったが、もに入ってこない。壁掛け計の針が午を回り、を過ぎ、を指した。
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半、玄関の鍵が回る音がした。
私は急いでテキストに線を落とし、何事もなかったかのようにペンをらせるふりをした。
「ただいま」
「おかえり」
靴を脱ぐ音。コートを掛けるハンガーの擦れる音。リビングに入ってきた真紀の顔を、私は努めて平静を装いながら盗み見た。
泣き腫らした様子も、浮かれた様子もない。ただし、歩き疲れたような、曖昧な表だった。
「どこってたの?」
聞かないでおこうと決めていたはずなのに、喉から勝に言葉がこぼれ落ちていた。
真紀はキッチンへ向かい、蔵庫からペットボトルのを取りしてコップに注いだ。
「駅のカフェ。相澤さんと会ってきた」
臓がねがった。
本当に、自分だけで連絡を取って会いにったのだ。私を通さずに。
「……そう。会えたんだ」
「うん。し話しただけ」
「どうだったの?」
私の声が、しずつのめりになっていくのを止められなかった。
「どうって?」
「どうだったのか聞いてるの。あの、何て言ってた? ホテルのこと、何かってた? 条件の話とか、これからどうするとか……」
真紀はコップのをみ、ゆっくりと息を吐いた。
「別に、そんな話はしてないよ。仕事が忙しいとか、休みのは何してるとか。普通の話」
「普通って、どのくらい?」
自分でも驚くほど、鋭い詰問の調になっていた。
「普通って何よ。
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あの、初対面でいきなりあんな備考欄見せて、私と話そうとしただよ? 誠実そうに見えて、何か裏があるかもしれないじゃない。ちゃんと確認したの? 次も会うつもりなの?」
真紀のが止まった。
コップを持ったまま、姉は疲れた目で私をじっと見つめた。その瞳には、先週のタクシーで見せたような激しいりはなかった。ただ、く底のれない失望のようなものが静かに沈んでいた。
「由里」
真紀が静かに私の名を呼んだ。
「あんた、どうしてそんなにりたいの?」
声がなかった。
「私が誰と何を話して、どうじたか、どうして全部あんたに報告しなきゃいけないの?」
「それは……お姉ちゃんが変な男に騙されたら困るから……」
「相澤さんは変なじゃないよ」
真紀はコップをシンクに置き、背を向けた。
「でも、もう会わないとう」
その言葉に、私の胸の奥で瞬、醜い堵が広がった。ほら見たことか、やっぱり私の言う通りにしておけばよかったのだ、という声がをもたげかけた。
だが、真紀の次の言葉が、その浅ましいを根こそぎ砕した。
「相澤さんに断られたわけじゃないの。私が……自分で断ったの」