"優先的に妹さんと" 第4話
送信ボタンのの指
計の針が夜のを回っていた。
私はベッドに入ったまま、度も寝返りを打てずに井の目を数えていた。
壁枚隔てた隣の部からは、何の物音も聞こえてこない。
いつもなら、このになればドアが控えめにノックされるはずだった。「由里、起きてる?」「さっきはごめんね、ちょっと言いすぎた」と、真紀がパジャマ姿でマグカップをつ持って入ってくる。そしてベッドの端に腰掛け、のない愚痴をこぼしながら、最には「やっぱり由里の言う通りにしてよかった」と堵の息を吐く。
それが、こので何回、何百回と繰り返されてきた私たちの常だった。
私は枕元のスマートフォンにを伸ばした。画面を点灯させても、何の通も届いていない。
『度でも、自分で決めなよって言ったことがありますか』
瀬子の乾いた声が、の奥で何度も再される。
言ったことはない。そんな記憶はどこを探してもなかった。
だって、姉が訊いてくるのだ。「この、変じゃない?」「この保険、入った方がいいかな?」「この、ちょっと神経質そうに見えるよね?」。
訊かれたことに対して、最も全で、最も損をしないを教えてあげるのが、しっかり者の妹としての私の役割だったはずだ。父がくに倒れたも、母が怪しい投資話に引っかかりそうになったも、全部私が調べて止めてきた。
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族ので、私が番失敗しないだったから。
私はベッドから抜けし、音を忍ばせてリビングへと向かった。
喉が渇いていた。蔵庫の麦茶をもうと廊にた、真紀の部のドアの隙から、青いが漏れているのに気がついた。
ドアのにち止まる。
息を潜めると、微かにシーツが擦れるような音が聞こえた。
真紀は起きている。
その部ので、真紀が何をっているのか、私にはまったく像がつかなかった。きてきて、姉が何を考えているのか分からなかったことなど、度もなかったはずなのに。
ノックをしようと、を胸のさまで持ちげた。
「お姉ちゃん、起きてるの?」と声をかければ、きっと扉はく。そうすれば、いつものように「瀬さんも言い方が酷かったよね」「相澤さんもちょっと空気が読めないだった」と、適当な共通の敵を作って、元の関係に戻れるかもしれない。
だが、持ちげた私の指先は、空で固まったままかなかった。
昼の真紀の目が脳裏に焼き付いていた。あの、剥きしの屈辱とりに満ちた目。
もし今ノックをして、姉がいつも通りの力のない笑顔で扉をけたら。
それは本当に、姉自のなのだろうか。
それとも、私がそうさせるのだろうか。
私はゆっくりとをろした。
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その頃、暗い部ので、真紀はベッドの背もたれに体を預け、スマートフォンの画面をじっと見つめていた。
画面に表示されているのは、昼、相澤さんがり際に名刺の裏にりきしてくれた個の携帯番号だった。
真紀の親指が、メッセージの入力画面のでさく震えている。
『本はお見苦しいところをお見せしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。もし相澤様さえよろしければ、もう度だけ、でお会いしてお話しさせていただけないでしょうか』
送信のアイコンのに指を置いたまま、真紀は何度も息を吸い、吐きした。
いつだって、指先が迷ったは隣の部へけばよかった。「この文面で丈夫かな?」「もっとくした方がいい?」。そう訊けば、由里はいつだって完璧に正された文章を返してくれた。由里が「これでいいよ」と頷いてくれれば、どんな結果になっても由里のせいにできた。自分の選択で傷つく恐怖から、ずっと妹が守ってくれていた。
けれど、昼の相澤さんの言葉が消えなかった。
『あなたご自の言葉で連絡をください。妹さんを挟まずに』
真紀の指が、送信ボタンのになった。
画面にさく表示された「送信完」の文字を、真紀は見いた目で見つめ続けた。
廊で、カチリと蔵庫のドアが閉まる音がした。
その音を聞きながら、私は暗のでたい麦茶を喉に流し込んでいた。
姉が今、私のらない所で何かのボタンを押したことにも気づかないまま。