"結婚式には来ないでと言った親友" 第15話
ドアのの約束
真由がブライズルームへと連れてかれ、メイクのやり直しが始まった。
親族控のざわめきも、川さんがをげて回ることで、次第に落ち着きを取り戻しつつあった。演が遅れる旨のアナウンスが館内に流れ、参列者たちにはウェルカムドリンクのシャンパンが配られ始めている。
私は、ホテルの華やかな赤絨毯を踏みしめながら、階のエントランスロビーへとりた。
吹き抜けの井から吊るされた巨なシャンデリアが、まばゆいを放っている。週末のロビーは、チェックインを待つ国観客や、カフェで談笑する々で賑わっていた。
私はクロークの横を通り抜け、自ドアへと向かった。
のの夜、のるファミレスで真由が叫んだ言葉が、の奥に残っていた。
――もし私がいつか結婚しても、あんただけは絶対に呼ばないから。
私はあの、その言葉を受け入れたのだ。
お互いに正しさを譲れず、相の領域を侵犯し、取り返しのつかない傷をつけった。その結果として結ばれた「度と会わない」という約束を、私は今まで守ってきた。
今朝、彼女が私を呼んだのは、結婚を祝福してもらうためではない。ただ、からりるための、あるいは自分のでつための、劇薬としての私が必だっただけだ。
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その役目は終わった。
彼女はからり、自分の言葉で婚約者と話し、自分ので親族のにった。
ならば、私は私の所へ帰るべきだった。代の分別とは、そういう潮を見誤らないことだ。
ガラスの回転ドアにを伸ばしかけた、そのだった。
「梨!」
ロビーの喧騒を切り裂いて、鋭く通る声が響いた。
振り返ると、エスカレーターの脇から、純のドレスの裾を両で持ちげた真由が、でこちらへ向かってってくるところだった。
ろから、インカムをつけたメイク担当の女性が「婦様、らないでください! 裾が!」と鳴をげながら追いかけてきている。
真由は私の数歩でを止めた。
きれいに直されたメイク。赤みのから丁寧にねられたファンデーションと、塗り直されたのリップ。えられた髪ので、パールのティアラが誇らしげにっていた。
「……何やってんのよ」
私は呆れたように言った。
「あと分で始まるんでしょ。嫁がロビーをり回るもんじゃないわよ」
「あんたこそ、何やってるの」
真由は肩で息をしながら、私を睨みつけた。
「どこく気?」
「帰るのよ。用事は済んだでしょ」
「帰る?」
真由は眉をねげた。
「式、見ないで帰る気?」
「当たりじゃない」
私はコートの襟元を軽く正した。
「、あんた言ったでしょ。
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『結婚してもあんただけは絶対に呼ばない』って。私、あの約束はちゃんと守るつもりよ。義理堅い性格なの、ってるでしょ」
真由は呆れたようにを半きにし、それからさくを鳴らした。
と同じ、し勝ち気で、気な笑みが彼女の唇に浮かんだ。
「気が変わったの」
真由は、胸を張って言った。
「……は?」
「だから、気が変わったのよ。は絶対に呼びたくないとったけど、今は見ていってほしいの。あんたに、私のれ姿を見せてやりたいの。文句ある?」
私は言葉を失った。
気が変わった。
度決めたことに縛られ、の期待から逃げられず、引き返すことを何よりも恐れていた女が。
で最も格式張った結婚式の、その演の直に、何の衒いもなく、堂々と「気が変わった」と言い放ったのだ。
胸の奥が、いもので満たされていくのをじた。
それはや涙といった劇なではなく、まるでい氷がの陽を浴びて、静かにへと還っていくような、い堵だった。
「……勝な女ね」
私が呟くと、真由は満面の笑みを浮かべた。
「あんたにだけは言われたくないわよ。……ほら、席、つ余ってるから。親族席の端っこだけど、座ってきなさいよ」
真由はそう言って背を向け、メイク担当の女性に促されながら、チャペルへと続くエスカレーターへと歩きした。
その背は、駐でさく丸まっていたとはまるで別のように、真っ直ぐに伸びていた。
私はさく息を吐きし、コートを脱いで腕に掛けた。
「……自分で言ったんだからね」
誰にともなくそう呟きながら、私は彼女のい裾のあとを追って、の満ちる階段をがっていった。