"結婚式には来ないでと言った親友" 第12話
戻れない所
「したい」という文字が内に落ちた、私はすぐに笑顔を作ったり、堵の息を漏らしたりはしなかった。
放しでぶ面ではないことを、私自が番よく分かっていたからだ。したいのに、りられない。その矛盾こそが、真由をここまで追い詰めてきた元凶なのだから。
「じゃあ」
私は努めて平坦な声で、次の問いをねた。
「どうして、りられないの」
責めるニュアンスは切含めなかった。ただ、事実の確認として、静かに尋ねた。
真由は、自分のい袋をじっと見つめた。その指先が、膝のでぎゅっと握りしめられ、やがて力なくほどけた。
「……怖いの」
「何が?」
「このからりて、エレベーターに乗って、あの扉をけて……みんなので誓いの言葉を言ったら」
真由の瞳が、暗いのを反射して濡れていた。
「もう度と、引き返せなくなる」
その言葉がた瞬、私は自分の胸の奥の、番固い結び目が解けるような覚を覚えた。
見えた。
これが、真由を縛り付けていた鎖の、最の輪だ。
「私ね、ずっといい子できてきたの」
真由は、ぽつりぽつりと話し始めた。まるで、自分のにある澱を、つずつ検分するように。
「親がぶを選んで、波のたない会社に入って、周囲が望むような笑顔を作って。……度『はい』って言ったことは、途で嫌になっても、絶対に投げしちゃいけないってってきてきた。
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途でやめるのは、周囲を裏切ることで、無責任で、として失格なんだって」
彼女の呼吸が、わずかに震えた。
「の式をやめたもそうだった。あの、私はまれて初めて、周囲の期待を裏切ったの。親に泣かれて、親戚に呆れられて、職のたちには腫れ物に触るような目で見られて……あのの、背に刺さるたい線が、今でもにてくる」
真由はドレスの胸元をく押さえた。
「拓は優しいよ。好きだよ。……でもね、今ここで『はい、誓います』って言っちゃったら、もう、逃げせなくなるんじゃないかって、そうっちゃったの。もし、に、どうしても緒にいられなくなった……『あの、あんなに勢にお祝いしてもらったのに』『あんなに迷惑をかけて結婚したのに』って、また自分を呪いながら、し続けるしかないんじゃないかって」
真由の頬を、たな涙が伝った。
「結婚するのが嫌なんじゃない。……結婚したら、もう度と『嫌だ』って言えなくなるのが、ぬほど怖いの」
勝な言葉だった。
今こののために、何ヶもから準備をね、を支払い、全国から駆けつけてくれた参列者たちに対して、あまりにも誠実で、掃き溜めのような本音だった。
結婚式の当に、嫁が「いつか嫌になったに逃げせなくなるのが怖い」
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などと言いすなんて、世般から見れば、単なる儘であり、覚悟のりない子供の戯言として切り捨てられるだろう。
けれど、私にはその痛みが、痛切なほど理解できた。
私の職にやってくる婚調の申たちも、みんなそうだったのだ。「最初から違はあった」「でも、結婚した以はしなきゃいけないとった」「親をしませたくなかった」――そうやって、自分のの鳴を無して、と耐え続け、最には魂をすり減らして抜け殻のようになってから、ようやく調の席に辿り着く。
真由が恐れていたのは、結婚そのものではない。
「選ぶ」ことによって、将来の「選び直す自由」を永に奪われることへの、根源な恐怖だったのだ。
「川さん!」
私はスライドドアからを乗りし、柱のにいた男を呼んだ。
川さんが、弾かれたようにこちらへ駆け寄ってくる。そのろから、腕計を見つめるホテル責任者が、酷な取りで続いていた。
「真由」
私は振り返り、親指で彼女の頬の涙を乱暴に拭った。
「あんたのそのけない本音、今すぐあいつに直接言いなさい」
「え……?」
「私に言ったってないのよ。これから緒に暮らすのは、私じゃないんだから」
タイムリミットまで、あと分を切っていた。
柱のから戻ってきた川さんが、息を切らしてのドアのにった。
その線が、涙で顔をぐしゃぐしゃにした真由と、真っ直ぐにぶつかりった。