"結婚式には来ないでと言った親友" 第11話
たったつの質問
「失礼いたします!」
苦しい泣き声が響く輪のそばに、先ほどのホテル責任者が再び姿を現した。
今度はではなかった。ろには、黒いインカムをつけた若い男性スタッフ名と、フロントの内線用とわれる子を持った女性スタッフが控えている。
責任者の顔には、もはや営業用のは完全に消え失せていた。
「川様。午分です」
男は計盤を指差した。
「挙式始のタイムリミットまで、あと分となりました。現、親族控の皆様には『婦装の具による調』とご案内しておりますが、これ以の引き延ばしは能です。厨からは、菜の差し替えを含めても、分を過ぎれば本の全宴席の運営にな支障がると最終通告が入っております」
責任者はバインダーに挟まれた類――解約および違約に関する規定をめくり、川さんの目のに掲げた。
「分までに婦様が控にお戻りいただけない、当ホテルとしては本の催事を『催能による即解約』として処理を始いたします。参列者の皆様への止のアナウンス、お引き取りのご案内、および損害のご請求の続きに移らせていただきます。ご決断を」
徹な事務連絡だった。だが、ホテル側に何の落ち度もない。
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彼らは彼らの仕事を全うしているだけだ。
「川さん、分だけ、あっちにっててもらえますか」
私が言うと、責任者は眉をひそめて私を見た。「失礼ですが、部者の方は……」
「分で決めます。分経ったら、りるか、解約の類にサインするか、どっちかを必ずします。だから、向こうで待ってください」
私の声のさに気圧されたのか、責任者は川さんの顔を見た。川さんは無言で頷き、スタッフたちを促してメートルほどれた柱のへと移していった。
階のたいが、スライドドアから吹き込んでくる。
内には、泣き疲れて過呼吸気に肩を揺らす真由と、私のだけが残された。
私は真由の隣に座り直した。
もう、はない。誤魔化すことも、のい話でを稼ぐこともできない。
私は真由のぐしゃぐしゃになった顔を見つめた。落ちたマスカラを拭ってやることも、乱れたベールを直してやることもせず、ただ、彼女の線を待った。
真由が、腫れがった目をゆっくりとこちらへ向けた。
「……梨」
「うん」
「私、どうしたらいいの」
また、彼女は私に答えを求めてきた。
私に背を押してほしいのだ。どちらでもいい、「やめなさい」でも「きなさい」でもいいから、私がい声で言ってくれれば、彼女はその決定に乗っかることができる。
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そしてで、もし何かが狂ったとしても、「あの、梨が言ったから」と、のどこかで言い訳ができる。
かつての私なら、その誘惑にんでびついていただろう。
『そんなに嫌なら、全部やめちゃいなさい。おのことなんて、でどうにでもなるわよ』――そうやって、自分が彼女のの救世主になったような顔をして、引きを代わりに引いてやったはずだ。
けれど、私はその言葉を完全に殺した。
私は、歳の井梨として、そして何より、真由というのの友として、彼女の瞳を真正面から見据えた。
余計な修辞も、状況の分析も、私の見も、切挟まない。
ただ、たったつの、最もシンプルな問いを、彼女の胸の真んに置いた。
「真由」
「……何?」
「あんた、拓さんと結婚したい?」
真由が、息を呑んだ。
のファミレスで投げつけた問いと同じ言葉。
けれど、今回は語尾に『本当はしたくないんでしょ』という侮蔑も誘導もついていない。
ただの、純粋な問いだった。
真由の喉が、微かにした。
彼女は線を彷徨わせた。ホテルの井、くで待つ川さんの丸まった背、元に落ちた母親からの着信履歴の残るスマートフォン、そして、自分のを包む純のチュール。
秒。秒。
くの送の音だけが、障りに響いていた。
やがて、真由の唇が震えながらいた。
「……したい」
掠れた、けれど、驚くほど芯の通った声だった。
「したいよ。……拓と、緒にきたい」