"結婚式には来ないでと言った親友" 第6話
の夜
窓のでは、川さんが苛ちを隠せない様子で、駐の柱に背をもたれかけさせていた。ポケットからタバコを取りしかけ、禁煙の標識を見て、舌打ちをして箱をしまい込む。彼の背からも、限界がづいている気配が濃く漂っていた。
私は、息をえようとしている真由の横顔を見つめた。
彼女のこの姿を見るのは、これが初めてではなかった。のあの夜も、彼女はまったく同じ顔をしていたのだ。
の。真由は歳だった。
相は、真由の職の取引先に勤めていた、歳の真面目な男性だった。浮気もしない、借もない、親戚づきあいも無難にこなす、周囲の誰もが「真由ちゃんにはお似いの、穏やかなね」と太鼓判を押すような相だった。
結婚が決まり、結納が終わり、式が予約された。
真由は毎週末のようにブライダルフェアに通い、引き物のカタログを抱えて私の部にやってきた。けれど、式の予定がヶ、ヶと迫るにつれて、彼女のからる言葉がしずつ変わっていった。
『居の所、彼の職にい方になりそうなの。私の通勤は半になっちゃうけど……まあ、彼、朝がいだから仕方ないよね』
『彼のご両親、ゆくゆくは同居を希望してるみたいで。
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まだ先の話だし、男だから、それくらいは覚悟しなきゃいけないよね』
『都度都度話しおうとはうんだけど……でも、もう式も内払っちゃったし。ここまで来ちゃったから』
ここまで来ちゃったから。
彼女はその言葉を、呪文のように繰り返すようになった。
違はある。納得のいかない妥協もある。けれど、度転がり始めた輪を止めるだけの理由が見つからない。周囲の期待と、投じたとが、彼女の退を確実に塞いでいた。
そして、式の週。夜を回ったファミレスで、私は限界に達していた。
目のに座る真由は、目のに濃い隈を作り、もをつけていないハンバーグのえた脂を見つめていた。その々しい姿を見ているうちに、私の胸のにあった苛ちが、りとなって噴きしたのだ。
当、私はすでに事調の事務員として働き始めてが経っていた。
調の現には、「最初からしおかしいとっていたけれど、周囲に流されて引き返せなかった」と涙を流す女たちが、毎週のようにやってきていた。さな妥協を積みねた結果、取り返しのつかない破綻を迎えた夫婦の類を、私はのように見てきた。
そのプロ気取りの傲さが、私のを滑らせた。
『あんた、本当は結婚したくないんじゃないの?』
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私がそう言い放った瞬、真由の顔からすべての血の気が引いた。
『……え?』
『見いにくような顔して式の準備してさ。何つ自分の希望を通せてないじゃない。そんなにしてまで、誰のために結婚するの?』
『梨、そんな言い方……』
『違う? ここまで来ちゃったからって、それ、自分のをのせいにしてるだけでしょ。今やめる方が、結婚してから婚するより何倍もマシよ』
私の言葉は、論理には何つ違っていなかった。正論だった。徹で、理で、ぐうの音もないほど「正しい指摘」だった。
だが、真由は泣き崩れる代わりに、猛烈な勢いでちがった。テーブルが揺れ、伝票がに落ちた。
『あんたに私の何がわかるのよ!』
内の数ない客が斉にこちらを振り返るのも構わず、真由は私を睨みつけた。その瞳には、私がそれまで度も見たことのない、剥きしの憎悪が宿っていた。
『結婚もしたことない、誰かと暮らしたこともないあんたに、私の何がわかるっていうの! もう度と私のに現れないで。もし私がいつか結婚しても、あんただけは絶対に呼ばないから!』
真由はカバンを掴み、夜ののにびしていった。
残された私は、え切ったドリンクバーの烏龍茶をみ干しながら、のでややかに呟いていた。
――私は正しいことを言った。
痛いところを突かれたからって、逆ギレして逃げしたのはあっちだ。
あのの私は、自分が友を傷つけたなどとは微もっていなかった。むしろ、目を覚まさせてやろうとしたのに拒絶された「被害者」の顔をして、彼女との縁を切りしたのだ。