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"結婚式には来ないでと言った親友" 第3話

「どうして」と「わからない」

ドアが閉まった途端、の気配が遮断され、内はが痛くなるほどの静けさに包まれた。

私は真由の隣、ウェディングドレスの裾が触れないギリギリの位置に腰をろした。真由は方の運転席の背もたれをじっと見つめたまま、微だにしない。膝のでねられた指先だけが、かすかに張っていた。

「久しぶり」

私が言うと、真由は線をかさずに、さく「うん」とだけ返した。

っているようには見えない。怯えているようにも見えない。ただ、自分の周りに目に見えないいガラスの膜を張り巡らせて、そこから歩もにまいとしている、そんな頑なさがあった。

「川さんが、まで来たよ」

「……迷惑だった?」

「迷惑に決まってるでしょ。曜の朝よ。パジャマのままゴミししようとしてたところ」

私の軽に、真由の元がほんのわずかに緩んだ。だが、その緩みは瞬で消えり、再び無表の仮面が戻ってきた。

「どうしたの」

私は単刀直入に切り込んだ。仕事柄、回しな同やれな置きが、追い詰められたを余計に疲れさせることをっていたからだ。

「川さんに何か隠し事でもあった? 浮気とか、借とか」

「ないよ」

真由は即座に首を横に振った。

「真面目なだよ。タバコも吸わないし、お酒も付きい程度。

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私の親のことも事にしてくれる」

「義理の両親と揉めたの? 同居しろとか、仕事を辞めろとか言われた?」

「ううん。優しいたち。式の準備も、私たちの好きにしていいって、ししないでくれた」

「じゃあ、式のスタッフとトラブル?」

「ううん。みんな、すごく親切にしてくれてる」

つずつ、側の理由が消されていく。

逃げしたい嫁にありがちな、わかりやすい悪役はどこにもしなかった。

「真由」

私は彼女の横顔をじっと見つめた。代半ばの肌には、どれほど入にメイクを施しても隠しきれない、をねたの疲れが滲んでいた。

「川さんのこと、好きなの?」

その問いに、真由は初めてこちらを向いた。その瞳には、嘘偽りのないが宿っていた。

「好きだよ。事にしたいとってる。緒に暮らしたいし、彼のお弁当を作るのも、休みのに緒にスーパーにくのも、全部楽しいよ」

迷いのない言葉だった。声に震えもない。

私は眉をひそめた。

「相のことが好きで、周りも協力で、これといったトラブルもない。……なのに、どうしてりないの? 何が嫌なの?」

真由は再び線を膝のに戻した。

いサテンのを、袋越しにぎゅっと握りしめる。そして、吐息のような声で言った。

「……わからない」

「わからない?」

「うん。自分でも、どうしてなのか、全然わからないの」

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その声を聞いた瞬、私の背筋にたいものがった。

嘘をついているの「わからない」ではない。言い訳を探しているの「わからない」でもない。彼女自が、自分の体の奥底から湧きがってきた拒絶反応の正体を掴めず、混乱し、ち往しているの声だった。

の私なら、ここで即座に切り捨てていただろう。

『わからないわけないでしょ。自分のことじゃない。逃げてるだけでしょ』と。

正論をナイフのように振り回して、相の曖昧さを断罪することが、誠実さであり友だと信じ込んでいた。事実、の私はそうやって彼女を追い詰めたのだ。

だが今の私は、それがどれほど暴力で、傲な為だったかをっている。

は、すべてを論理に説できるわけではない。特に、自分自をずっと回しにして、の期待ばかりを背負ってきてきたは、自分の「本音」にたどり着くための回そのものが麻痺してしまっていることがあるのだ。

「朝、起きたはどうだったの」

私は声をしくして尋ねた。

「普通だった。目覚ましが鳴って、顔を洗って、拓のお母さんから届いたお祝いのメッセージに返事をして。拓のに乗って、ここまで来たの。メイクに入って、髪をセットしてもらって、このドレスに袖を通したも……綺麗だなって、ちゃんと嬉しいとったの」

「うん」

「でもね、仕がった自分の姿を鏡で見て、スタッフのに『では、親族控へ移しましょう』って言われて、部をようとした……急に、がかなくなった」

真由の指先が、ドレスの布を千切れんばかりにく絞りげた。

「臓が、のすぐそばで鳴ってるみたいにバクバクして、息が吸えなくなって。『ちょっとお洗いに』って言って抜けして、ここまでってきて、のドアを閉めたの。そしたら……もう、度とけられなくなっちゃった」

彼女の呼吸が、微かに浅くなっていた。

理由はわからない。でも、体が絶対に拒否している。

「みんなが来るの」

真由は、震える声で続けた。

「拓も、プランナーさんも、うちの母も。みんな窓のからノックして、『どうしたの?』『丈夫?』『どこか痛いの?』って聞いてくるの。みんな、私を配してくれてる。すごく優しい顔で、私を助けようとしてくれてる」

真由の目が、じわりと涙で滲んだ。だが、その涙は決して零れ落ちず、瞳の縁で踏みとどまっていた。

「それが……息が詰まるほど怖かった」

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