"十一時八分の「家に着きました」" 第13話
シンガポールきの辞令
定の修羅から、丸が経った。
美穂はあの夜、泣き疲れたようにタクシーを拾って世田の自宅へ帰っていった。
理のアパートには、その夜も、翌も、かりが灯ることはなかったという。美穂から度だけ、「妹と連絡が取れたら教えてほしい」と、プライドをかなぐり捨てたいメッセージが届いたが、私にもどうすることもできなかった。
私は自分の部で、い沈黙のに座り込んでいた。
自分の踏み込みすぎたへの悔と、美穂から投げつけられた「あなたは何者なの」という言葉のみが、胸の真んに黒い鉄の塊のように居座っていた。
私はただのにすぎない。その境界線を越えてしまった代償が、あのの破滅な衝突だったのだ。
曜、の最の。
午を回った頃だった。
スマートフォンのメールアプリが、着通を告げた。
SMSではない。
私の会社の代表アドレスから転送されてきた、本の子メールだった。
差は、田辺理。
宛先には、私のプライベートのアドレスと、もうつ、美穂のものとわれるアドレスが並んで入っていた。
件名は、『ご報告と、最のお願い』。
私は震える指で、画面をスクロールした。
『真鍋様、そして姉さんへ。
先は取り乱してしまい、変申し訳ありませんでした。
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にご迷惑をおかけしたことを、からお詫び申しげます。
突然ですが、会社から正式な内示を受けました。
けより、シンガポール現法への向を命じられました。
品発の規ラインちげに伴うもので、期は最でもとなります。』
臓が、ドクンと嫌な音をてた。
シンガポール。
京から何千キロもれた、い異国の。
『以から希望をしていた案件でした。
でから製品発に関わることは、私の入社以来のでした。
本来であれば、先週の点で受諾のサインをすはずでした。
これまでの私なら、すべてをで決め、続きを終え、に乗る直に事報告のメールを本送って終わらせていたといます。
誰にも相談せず、誰の見も聞かず、自分のだけでっているのだと証するために。』
メールの文面は、理らしい几帳面でった文字で綴られていた。
だが、次の段落から、文体のリズムがわずかに乱れていた。
『でも、どうしてもサインができませんでした。
定で真鍋さんに言われた言葉が、かられません。
私は今まで、誰にも迷惑をかけないになりたかったのではなく、誰とも関係を持ちたくない臆病者だったのだと、ようやく気づきました。
姉さんが母の介護でボロボロになっていた、私は「迷惑をかけない」
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という実で、逃げていただけでした。
真鍋さんの番号にメールを送り続けていたのも、「返事のない全な所」に逃げ込んでいただけでした。
誰かと関わるということは、相のを引き受けるということであり、自分のが誰かを傷つけたり、配させたりするリスクを背負うことなのだと……歳になって、ようやくりました。』
画面を見つめる私の界が、微かに滲んだ。
『勝なのは々承しています。
ですが、私は今回の辞令を、ただの逃避にしたくありません。
で勝に決めて、誰にも何も言わずに消えるような、今までのき方をやめたいのです。
会社の最終回答期限は、の曜、正午です。
私は、きたいとっています。
けれど……今回は、自分だけで決めたくありません。』
メールは、そこで途切れていた。
「どういますか」という問いかけも、「引き止めてほしい」という甘えもない。
ただ、自分が今まで避けてきた「者と関わることのみ」のにち尽くし、震えるを伸ばしているような、器用な空が残されていた。
私はスマートフォンの画面を伏せ、両で顔を覆った。
たい夕暮れのが、カーテンの隙から部に差し込んでいた。
の正午まで、を切っている。
今までなら、私は何もしなかったはずだ。
「これは彼女のだ」「がを挟む筋いではない」「私は何も約束していない」。
そうやって正しい理屈を並べて、全な防波堤の内側に引きこもっていただろう。
だが、あのメールのに漂っていた、怯えながらも差しされたさなのひらの気配を、私はもう「らなかった」ことにはできなかった。
夜の帳が、静かに京のを包み込もうとしていた。
計の針が、を指していた。