"十一時八分の「家に着きました」" 第11話
返信しなかった共犯
「……勝なことを言わないでください」
絞りすような声だった。
理は湯呑みからをし、両を膝のでぎゅっと握りしめた。爪が布にい込み、骨が浮きるほどく握られている。
「勝? 勝にも送りつけてきたのはあなたでしょう」
「そうです! 私が始めました。私が違えて、私が勝に送り続けました!」
理の声が裏返り、内のテレビの音を瞬だけかき消した。奥の厨から主が怪訝そうに顔を覗かせたが、理はそれに気づきもしない様子だった。その瞳の奥に、これまで見たことのない激しいのが灯っていた。
「でも……真鍋さん、あなただって同じじゃないですか!」
「何ですって?」
「あなた、度でも着信拒否にしましたか? 携帯の操作つで、私の番号からの通を消すことなんて簡単にできたはずです。なのに、あなたはずっと私のメッセージを受信し続けた」
理の呼吸が荒くなる。その言葉は、私の胸の柔らかい急所を正確に抉り抜いてきた。
「あなたが、度も返信しなかったのはなぜですか? 『関わりたくなかったから』? 本当にそれだけですか?」
私は息を詰まらせた。反論の言葉を探そうとするのに、舌が鉛のようにい。
「返信をしなければ、あなたには責任が発しないからです。私が誰で、どんな活をしていて、どんな顔でそのメールを打っているか……何もらなければ、あなたは何の傷も負わずに済む。
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誰かの『無事』という気配だけを、ただ都よく消費していたんじゃないですか!」
理のきな瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。彼女はそれを拭おうともせず、私を射抜くように睨みつけた。
「私たちは同じです。お互いに顔も見せず、傷つくリスクも背負わず、ただ暗ので相の体温だけを確かめっていた。……共犯だったんですよ、私たち」
共犯。
その文字が、私の喉元に突き刺さった。
否定したかった。そんな々しい関係ではない、私はただの被害者で、境界線を守っていただけの分別あるだと叫びたかった。
だが、できなかった。
毎晩を過ぎると無識に画面を確認していた、あのの私の指先が、すべてを肯定していたからだ。
私はこの女の「点呼」に、勝に相槌を打っていたのだ。沈黙という、番都のいい形で。
沈黙がのに落ちた。
を叩く脚がくなり、トタン根を激しく打ち鳴らしていた。
理は荒い息を吐きながら、テーブルのにぽたぽたと涙を落としていた。
私もまた、膝ののバッグを握りしめたまま、言葉を失って座り込んでいた。互いの醜い防線を剥ぎ取りい、無残に剥きしになった臓を晒しっているような、耐えがたいが流れる。
そのだった。
カラン、と乾いた音をてて、定の引き戸が乱暴にいた。
たい夜と粒が内に吹き込み、濡れたビニール傘を握りしめた女性が、内にを踏み入れた。
濡れた紺のトレンチコート。肩で激しく息を乱し、髪を張り付かせたその顔を見て、私の臓が凍りついた。
田辺美穂だった。
美穂は内に線をらせ、奥のテーブルで向かいっている私と理の姿を捉えた。
その瞳に、信じがたいものを見たという絶望と、燃え盛るような激が渦巻いた。
「……やっぱり、ここだった」
美穂の声は、をうようにく、震えていた。