"白紙の投函" 第12話
もうの修司
「織、もうやめなさい」
拓也さんが張った顔で割って入った。
彼は座卓のにを乗りし、織の肩にを置こうとした。
「お父さんは君のことをって言ってくれてるんだ。ここまで育ててくれた親御さんに対して、そんな言い方はあんまりだよ。僕からも謝るから、ね? 度呼吸して、落ち着こう」
織は、そのを激しく振り払った。
「触らないで」
拓也さんの顔から、完璧だった笑顔が剥がれ落ちた。
「……なんなんだよ。僕は君たちの関係を修復しようとしてるんじゃないか。式まであと週もないんだぞ? 両親だって親戚だって、みんな楽しみにしてるんだ。ここで揉めて、何になるんだよ」
織は、涙で濡れた顔で拓也を見つめた。
その線には、りよりもい、底れぬ絶望が漂っていた。
「拓也さん」
「何だよ」
「あなた、さっきからずっと、お父さんの顔ばっかり見てるよね」
拓也さんが息を呑んだ。
「私の職の司のところにったも、居の取りを決めるも、私の見がお父さんとぶつかりそうになると、あなたはいつもそう言ったわ。『お義父さんの顔をてよう』『波をてないのがの対応だ』って」
「それは、円満にめるために――」
「あなたは優しいだよ。争いが嫌いで、誰にも嫌われたくない、すごくいい」
織の声は、静かに澄み渡っていった。
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「でもね、やってることはお父さんと同じなのよ。私に『して笑顔でいろ』って求してるの。お父さんは論理で私を縛ったけど、あなたは『優しさ』と『世体』で私を縛ろうとしてる」
「そんなつもりじゃない!」
「私ね、怖くなったの」
織はちがった。
居酒の暗い照ので、娘の姿が酷くさく、そして酷くくに見えた。
「お父さんから逃げたつもりで、私、また同じ所に帰ろうとしてるんだって気づいたの。自分の気持ちを殺して、相が嫌よくいられるための答えを探し続ける活を、あと何も続けるんだって」
「織、待ちなさい」
私もちがろうとした。だが、に力が入らなかった。
「式は、延期してください」
織はバッグを抱え、々とをげた。
それは親に対する礼儀というより、に向けられた、絶対に入り込めない境界線を引くための礼だった。
「これ以、誰の顔も伺いたくないの」
座敷の襖がき、そして静かに閉まった。
廊をざかっていく音が、やけに鮮に響いていた。
座敷に残されたのは、めきった料理と、付かずのビールグラス。
そして、信じられないものを見るような目でち尽くす拓也さんと、膝にをついたままけない私の、の男だけだった。