"白紙の投函" 第10話
居酒の座敷
翌の夜、佐々拓也さんから「でしお話しできませんか」と連絡が入った。
所は宿の裏にある、落ち着いた個の割烹居酒だった。障子で仕切られた畳半ほどの座敷には、すでに拓也さんと織が並んで座っていた。
「お義父さん、急にお呼びてして申し訳ありません」
拓也さんはちがり、々とをげた。スーツには皺つなく、ネクタイもきっちりと締められている。
「織から聞きました。何か……変なが届いて、お義父さんにご配をおかけしているそうですね」
私は座に腰をろし、織の横顔を瞥した。
織は膝ので両をね、畳の目をじっと見つめていた。メイクはっていたが、目のにい隈が差している。
「美さんという方にも、僕から連絡を入れました」
拓也さんはビールを私のグラスに丁寧に注ぎながら、誠誠といった表で言葉を継いだ。
「学代のご友とはいえ、あのようなやり方は度を越しています。織も、式の準備でし緒定になっていたみたいで……いわゆるマリッジブルーのようなものです。僕がもっとく気づいて、ケアしてあげるべきでした」
「拓也さん」
私はグラスを持たずに言った。
「君は、の内容を読んだのかい」
「いえ、現物は見ていません。
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ただ、織から体の話は聞きました」
拓也さんは屈託のない笑顔を作ってみせた。
「お義父さんが織を厳しく縛ってきた、みたいな話ですよね? 僕、笑っちゃいましたよ。お義父さんがどれだけ織を切に育ててこられたか、僕にはよく分かっていますから。織は素直で、誰に対しても気配りができて……それは違いなく、温かいご庭で育った証拠です」
拓也さんの言葉には、片の悪もなかった。
ただただ、事態を丸く収めたい。義父との関係にひびを入れたくない。トラブルを「の分別」で綺麗に片付けたい。そのだった。
だが、その言葉が発せられるたびに、隣に座る織の指先がくなっていくのが見えた。
「僕がお義父さんの分もしっかりと織を支えますから、どうかしてください。式も予定通りやりましょう。親族の皆さんにも、余計な配をかけるわけにはいきませんしね」
拓也さんはそう言って、座卓のに置いてあった織のに、自分のをねた。
「な、織。丈夫だよな」
それは、恋を励ます優しい仕に見えた。
だが、私には見えた。
拓也さんの指が、織の震えるを「くな、余計なことを言うな」と押さえつけるように、微かに力を込めているのが。
の空気を乱すな。
これ以、波をてるな。
の対応をしてくれ。
その無言の圧力が、男ののひらから娘へと注ぎ込まれていた。
織の線が、ねられたへと落とされた。
座敷のが、異様な静寂に包まれた。
数秒の、織はゆっくりと、ためらいのない作で自分のを引き抜いた。
拓也さんののひらが、畳のに虚しく滑り落ちた。
「……織?」
拓也さんが戸惑ったように眉を寄せた。
織は引き抜いたを自分の胸元に引き寄せ、顔をげた。
その瞳には、今までに度も見たことがない、暗く鋭いが宿っていた。