"白紙の投函" 第3話
オフィスビルので
侮辱されている、とった。
見らぬ何者かにのを覗き込まれ、次のを弄ばれているような烈なが、腹の底からこみげてきた。
私はを握りつぶし、ポケットにねじ込んだ。
くものか。
相が私のを誘導しようとしているなら、その通りにくことほど愚かな選択はない。私はもう引退したとはいえ、、組織ので無数のと駆け引きをねてきた男だ。顔も名もかせない卑怯者の筋きに、乗せられてたまるか。
翌朝、私は識して普段通りに振るった。
庭の植にをやり、聞を隅々まで読み、妻の買い物に付きってスーパーの荷物を持った。私は平静だった。私のは私のものだ。
だが、昼を終えて斎の子に座ったとき、考がどうしてもあの言葉へと引き戻された。
もし、拓也さんの職に、娘には言えない本当の退職理由があったとしたら?
調査会社が掴めなかった、関係の刻な破綻や、社内での隠蔽作があったとしたら?
「かない」という選択は、私のプライドを守るためのものに過ぎないのではないか。父親としての第の義務は、リスクを徹底に排除することではないのか。
気がつくと、私はスーツの着に腕を通していた。
午分。
私は京・青のガラス張りの層ビルのにっていた。
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見げるような代な建築。拓也さんが半まで籍を置いていた、名な設計事務所が入居するビルだ。
私は事に、員代の伝を使って、この事務所の役員と旧の柄であるに連絡を入れていた。個な挨拶という名目で、当の直属の司だった男性と喫茶で会う約束を取り付けていたのだ。
ホテルのラウンジで向かいったその司、岡崎という代の部は、困惑したように苦笑いを浮かべた。
「佐々くんのお父……あ、失礼、婚約者のお父様でしたね。彼が何かトラブルでも?」
「いえ、そういうわけではありません。娘が来結婚するにあたり、彼の仕事に対する姿勢などを、かつてのご司から伺っておきたかったのです。突然の無礼をお許しください」
私は名刺を差しし、最も穏健で誠実な父親の顔を作った。
岡崎氏はコーヒーにミルクを注ぎながら、慎に言葉を選んでをいた。
「佐々くんは優秀でしたよ。図面を引く腕も確かだし、何より当たりがいい。クライアントからも好かれていました。ただ……」
「ただ?」
「彼は、断れないなんです」
スプーンがカップの縁に当たるさな属音が、やけにきく響いた。
「施主が無茶な仕様変更を言ってくる。現からはコストを削れと突きげられる。板挟みになったとき、彼はどちらの求も笑顔で引き受けてしまうんです。
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『丈夫です、何とかします』と。どちらの顔もてようとして、結局、で夜通し図面を修正して辻褄をわせる」
岡崎氏は静かに息を吐いた。
「最の方は、らかに限界でした。それでも『自分の力ですから』と笑って、誰にも音を吐かない。司の私にすら相談しなかった。ある突然、糸が切れたように退職届をしてきたんです。引き留めましたが、駄目でした。誰とも争わず、誰の期待も裏切りたくない。そういうはね、から見ると誠実ですが、内側から壊れていくんですよ」
喫茶をたとき、午の差しがビルのからく差し込んでいた。
拓也さんは犯罪者でもなければ、誠実な男でもなかった。
それどころか、あまりにも誠実すぎて、周囲の期待を背負い込みすぎる男だった。
私はするべきだった。娘が選んだ男は、根底において善良なだったのだから。
だが、私の元は鉛のようにかった。
鉄の入りへ向かう群衆ので、私はち止まった。
私はなぜ、今ここにいるのか。
あのにかれていた通りに、私は午、このビルのへやって来た。
相は予能力者ではない。
私の性格、私の考回、私が「娘のため」という義名分を与えられればどのようなを取るかを、寸分の狂いもなく計算し尽くしていたのだ。
携帯話がポケットので震えた。
画面を見ると、織からのLINEだった。
『お父さん、席次表チェックしてくれてありがとう。肩の荷がつりたよ。今夜、寒くなるみたいだから邪ひかないでね』
液晶に浮かぶ娘の文字を見つめながら、私は吐き気にも似た戦慄を覚えた。
私は操られている。
そしてその糸を引いている者は、私の族の形を、私自よりもくっている。