"十年前消えた妹の耳たぶ" 第16話
京駅洲のカフェ
が過ぎ、甲府の々を覆っていたが解け始めたの旬。
私は休を取って、母を乗せてをらせていた。
あれからヶ。
母と奈津美は、毎週曜の夜に、分か分ほど話で話すようになっていた。
最初のヶは、お互いに何を話していいか分からず、詰問と沈黙が続いていたようだった。だが、奈津美が夫にすべてを打ちけたこと、夫が激して週ほどをたこと、それでも話しいをねて婚は踏みとどまったこと、の子どもたちにしずつ事実を話し始めていること――そうした現実の痛みをつひとつ母に報告するで、の会話はしずつ、「の傷」から「現の活」へと移り変わっていった。
そして今、はぶりに直接会う約束をしていた。
所は、実でも、甲府のでもなく、京駅の洲にあるホテルのロビーラウンジだった。
の所。
実に連れてくれば、母はまた「昔の奈津美」を求め、奈津美は息を詰まらせるだろう。奈津美が選んだのは、お互いが逃げを確保できる、静かなの真んだった。
京駅の駐にをめ、エレベーターで階にがった。
ラウンジの入りが見える通のベンチで、私は母のコートの襟を直してやった。
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母はしいのスカーフを巻き、し緊張した面持ちでハンドバッグを握りしめていた。
「真紀、緒に入らないの?」
母がそうに私の顔を見げた。
「入らないよ」
私は微笑んで首を振った。
「今は、お母さんと奈津美のだから。でゆっくり話しておいで」
「でも……」
「丈夫。何かあったら、の駐で待ってるから話して」
私は母の背を、軽くのひらで押した。
母はさく頷き、背筋を伸ばして、ゆっくりとラウンジの自ドアへ向かって歩きした。
ガラス越しに、奥の窓際の席が見えた。
紺の落ち着いたスーツを着た奈津美が、すでに座っていた。背筋を伸ばし、両を膝ので揃え、緊張した面持ちで入りを見つめている。
母がその席にづき、奈津美がちがった。
が向かいい、くをげう姿が見えた。抱きって泣き崩れるような劇な面はなかった。ただ、のの女が、分の空をに挟んで、静かに子を引き、腰をろしていた。
私は踵を返し、のが差し込む洲の通りへた。
乾いたが吹き抜けていく。
議なほど、取りが軽かった。
、私の肩にい込んでいたい鉛の鎖が、音をててれたような覚だった。
私は妹を許したわけではない。
父のに目にち会わなかった妹の自私を、完全にに流すことなどできないだろう。
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だが、もう妹を憎むために自分のを使うこともやめようとった。
私は私のを、この歳の元から、しく始めればいいのだ。
ポケットので、スマートフォンがく震えた。
ち止まって画面を見る。
メッセージアプリに、見慣れないアイコンから写真が届いていた。
表示されたのは、の差しの、公園のベンチできなソフトクリームを頬張るの子どもの写真だった。
学になった結菜と、まだ学の男の子。
はカメラに向かって、屈託のない満面の笑顔を向けていた。
写真のに、いメッセージが添えられていた。
【お姉ちゃん、この、来お姉ちゃんに会いたいって言ってる。会ってくれる?】
画面のの結菜の目元は、やはりしの奈津美に似ていて、そしてほんのしだけ、鏡のの私の目元にも似ていた。
私はスマートフォンのキーボードをちげた。
「おかえり」という言葉は、指が選ばなかった。
奈津美はあのには帰ってこないし、元の妹に戻ることもない。彼女は彼女の所で、嘘をつかずにきていく責任を背負い直しただけだ。
私は言だけ打ち込み、送信ボタンを押した。
【いいよ。美しいお、探しておく】
の京駅の雑踏のへ、私は歩きした。
で止まっていた計の針が、今、静かにき始めていた。