"十年前消えた妹の耳たぶ" 第14話
分の黒話
午をらせる柱計の鐘が、ボーン、とく回鳴り響いた。
居は静まり返っていた。
話台のの固定話は、ピクリともかなかった。
母は箸を止め、しだけを澄ませるような仕をしたが、すぐに諦めたようにさく息を吐いた。
「真紀、ケーキ、切りましょうか」
「……うん」
私はちがり、台所から包丁を持ってきた。
クリームに刃を入れ、等分にする。
つは母へ。
つは私へ。
つは仏壇の父のへ。
そして最の切れを、誰も座っていない奈津美の皿へ乗せた。
母はフォークをに取り、ゆっくりとに運んだ。
「美しいわねぇ。やっぱりたえのケーキは、甘さが優しくて番好き」
「よかったね、お母さん」
「ええ、本当に」
母は笑っていたが、その瞳の奥には、毎見慣れたい諦と寂しさが滲んでいた。
午半。
「ごちそうさま。片付けは私がやるから、真紀は座ってていいのよ」
母がちがり、空になった皿をね始めた。
奈津美の席のケーキには、フォークが刺さらないまま、表面のクリームが温でしだけ緩んでいた。
奈津美は話してこない。
あの夜の通告は、妹には届かなかったのだ。
彼女はまた逃げたのだろうか。それとも、夫と娘を守るために、実の母を永に切り捨てる決断をしたのだろうか。
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私の胸を、たいが吹き抜けていった。
になったら、すべてを話そう。
甲府の惣菜のことも、佐藤美穂という名も、学の娘のことも。
それは妹を破滅させることになるかもしれないが、もう私には、これ以母に嘘をつき続ける耐性が残っていなかった。
そのだった。
ジリリリリリリ――ン。
鼓膜を突き破るような、けたたましいベルの音が、静かな夜ののに鳴り響いた。
台所で皿を洗っていた母のが止まり、洗剤の泡にまみれた皿が、シンクのにカチャリと落ちた。
ベルの音が、度、度と続く。
黒話の呼びし音は、昔ながらの属な鋭さで、狭い居の空気を震わせた。
母がゆっくりと台所からてきた。濡れたをエプロンで拭きながら、信じられないものを見るような目で、話台を見つめている。
こんなに固定話が鳴ることなど、ここ数度もなかった。
午分。
約束のから、分遅れていた。
母の膝が、微かに震えていた。
「……こんなに、誰かしら」
母が受話器にを伸ばそうとして、躊躇した。
私は座卓に座ったまま、拳を固く握りしめた。ちがって代わりに受話器を取ることも、誰からか教えることも、自分に禁じていた。
「お母さん」
私の声に、母が振り返った。
「てみて」
母は唾をみ込み、震える指先で黒い受話器を持ちげ、に当てた。
「……はい。川でございます」
かすれた、しかし丁寧にえられた母の声だった。
受話器の向こうから、波のような、押し殺した嗚咽の音が漏れ聞こえてきた。