"「実の親じゃない」と夫に言われた日" 第15話
緊急連絡先の文字
先は、鏡の奥の目を細め、静かに微笑みました。
「お父様、お母様。温かいお話をありがとうございました。ご庭のいが、美咲さんの真っ直ぐな瞳によく表れています」
面接官たちが元の類をまとめ、最の事務続きに入りました。
寮監の女性教諭が、枚のの公用を机の央に差ししました。
『特別推薦入学確認票および緊急連絡先届』
番には、すでに浩司が記入した第保護者の欄がありました。
氏名:神浩司。続柄:父。
そして、そのすぐ。
【第保護者/緊急連絡先】の欄が、ぽっかりと空のまま残されていました。
「最に、緊急連絡先の確認をいます。寮活における緊急、または本の健康管理に関する決定をう共同監護者として、もう名の保護者の方の自署をお願いいたします。続柄もわせてご記入ください」
教先が、黒い性ボールペンを本、類の横に置きました。
私はさく息を吸い込みました。
の習慣というものは、あまりにも恐ろしいものでした。
私のが、無識のうちにペンに向かって伸びていました。そして、使い古してきたあの言葉が、唇の端からこぼれ落ちそうになりました。
『私は継母ですので、保護者欄は「監護」とけばよろしいでしょうか……』
その言葉が声になる直でした。
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トン、と机のに柔らかなみが落ちました。
美咲のでした。
制の袖から伸びた、細く、けれど力い美咲の指先が、私の伸ばしかけたのから類をそっと押さえたのです。
「美咲……?」
美咲は私を見ませんでした。
彼女は迷いのないつきでトレイからボールペンを取りげると、キャップをしました。
カチリと、さなプラスチックの音が部に響きました。
浩司も、息を呑んで娘の元を見つめていました。
美咲は用を引き寄せると、【第保護者氏名】の枠のに、丁寧な楷でき始めました。
『神 真紀』
インクがにしっかりと染み込んでいきます。
そして、その隣にあるさな【本との続柄】という角い枠。
美咲のペンの先が、枠の央にりました。
迷いは、ミリもありませんでした。
『母』
たった文字。
横、縦、点、点。
力く、墨黒の線が刻まれました。
喉の奥が、い塊で塞がれました。
界が急速に歪み、目のの文字が滲んで見えなくなりました。
、度もにされなかった言葉。
、呼んではいけないと封じ込められ、お互いに傷つかないために避け続けてきた言葉が、公な類の真んに、確固たる事実として刻まれていました。
美咲はペンを置き、ゆっくりと顔をげました。
その目には涙が溜まっていましたが、こぼれ落ちることはありませんでした。
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彼女は先の目をまっすぐに見つめました。
先は、用にかれたその文字を静かに見つめ、それから美咲に尋ねました。
「神美咲さん。確認いたします。あなたは本の推薦格を受諾し、来から、この学の寮として入学することを誓約しますか?」
面接のすべての空気が、止まりました。
浩司が、祈るように両を握りしめました。
美咲は、私の顔を見ました。
そして、隣の浩司の顔を見ました。
最に、面接官たちに向かって、で度も見せたことのないような、れやかで美しい笑顔を咲かせました。
「はい。入学します」
美咲の声は、澄み切った鐘の音のように響きました。
「入学して、懸命勉します。……でも、毎第の週末には、必ずこのがいるに帰ります」
私は両で元を覆いました。
止めどなく溢れしてきた涙が、指の隙を伝って膝のに落ちていきました。
放すことによってしか、繋がらない絆がありました。
娘をに縛り付けることで「母親」になるのではなく、娘が広い世界へと羽ばたいていく背を信じて送りすこと。それこそが、私がかけて辿り着いた、本当の「母親」の姿でした。
面接の窓のには、抜けるようなの青空が、どこまでもく広がっていました。