"「実の親じゃない」と夫に言われた日" 第6話
保険証の所すららない
私に説得を拒絶された浩司は、翌から「父親の威厳」を取り戻そうと躍起になり始めました。
「いいか、俺が全部やる。美咲のも、面談の続きも、全部父親である俺が正規の順で片付けるからな」
曜の午、浩司は腕まくりをしてリビングの類棚を荒々しく引っ掻き回していました。
野のから届いた最終面談の案内には、当に持参すべき類の覧が細かく記載されていました。
民票の写し、健康保険証のコピー、学の健康診断記録、そして保護者の同署名捺印。
浩司はリビングの引きしを段ずつ引き抜き、の封筒やファイルをテーブルのにぶちまけていました。
「おい、真紀! 美咲の保険証はどこだ? あと、昔の予防接種の記録とかが入ってる母子帳はどこにやった?」
私はキッチンのカウンターで、昼のうどんの汁を引きながら、振り返りもせずに答えました。
「美咲の保険証は、美咲本の財布に入っています。学になってからは、自分で病院へくこともあるので持たせてあります」
「はあ?! なんで子供にそんな事なものを持たせてるんだよ! 紛失したらどうするんだ!」
「紛失したことは度もありません。美咲はもう歳ですから」
「屁理屈を言うな! じゃあ母子帳はどこだ! 学ののアレルギーの記録が必なんだよ!」
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浩司は苛ちをわにしながら、テレビボードの引きしを力任せにけ閉めしていました。
カチャカチャとプラスチックのケースがぶつかりう障りな音が、リビングに響き渡ります。
その、階から美咲がりてきました。
美咲は乱雑に散らばったリビングの惨状を見て、たい目を父親に向けました。
「何してるの?」
「何してるのじゃない! おの母子帳を探してるんだよ! おが勝に面倒な学の面談なんか申し込むから、こっちは休返で類を揃えてるんじゃないか!」
浩司が眉を吊りげて鳴りつけました。
美咲はため息をつ吐くと、リビングの隅にある話台のに歩み寄りました。
そして、番のき戸を静かにけ、奥から紺のファスナー付き布ケースを迷わず取りしました。
「ここにあるよ」
美咲はケースをテーブルのにトンと置きました。
「真紀さんが、私の事な類は全部ここにまとめてくれてる。お薬帳も、予防接種のも、まれたの母子帳も、全部ここ」
浩司のが、空でぴたりと止まりました。
布ケースの表面には、テプラで丁寧に『美咲・医療関係』とラベルが貼られていました。美咲が歳の、このに来たから、私がしずつ理して保管してきたものでした。
浩司はそのラベルを見つめたまま、喉を詰まらせました。
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彼は、この棚のすららなかったのです。美咲がどこでをし、どこの児科にかかり、どんな薬を処方されていたのか、何つ把握していなかった現実が、然と並んだファイルのに晒されていました。
気まずさを誤魔化すように、浩司は無理やり声を張りげました。
「……ま、まとまってるなら最初からせばいいんだよ。体な、美咲、おは昔から周りに流されやすいんだ。のに急に成績がガタ落ちしただってそうだっただろ。あの頃つるんでた、派な友達の響じゃないのか? そんなふらふらした精神状態で、野の全寮制なんかでやっていけるわけがない!」
その瞬、美咲の顔から完全に血の気が引きました。
彼女の拳が、パーカーの袖ので刻みに震え始めました。
「……何それ」
「事実を言ってるんだ。おは昔から根気がない。元ので、親の目の届く範囲で堅くやっていくのが番なんだよ」
「……お父さん、何もらないくせに」
美咲の声は、く、けれどをうようなみを持っていました。
「何だと?」
「あの子のこと、何もらないくせに勝なこと言わないでよ! あの子は変な友達なんかじゃない! 私が陸部の練習でを痛めて、誰にも言えなくて保健に通ってた……毎クラスの連絡ノートをまで届けてくれた子だよ!」
浩司の目が泳ぎました。
「あ、を痛めた……? お、陸部を辞めたのは、勉に専するためじゃなかったのか?」
「ほら、やっぱり何もらない」
美咲は自嘲するようにく笑いました。その瞳から、ぽろぽろと粒の涙が溢れしました。
「のに、靭帯を痛めてれなくなったの。先にも相談したし、病院にも通ったよ。真紀さんは毎、湿布を買ってきてくれたし、病院の送り迎えもしてくれた! お父さんは何してた? 『部活辞めたのか、じゃあに向けて塾を増やせ』って、それしか言わなかったじゃん!」
「それは……おの将来をって……」
「私の将来なんて見てない! お父さんが見てるのは、『自分の言う通りに育つのかからない娘』だけでしょ!」
美咲はテーブルのの母子帳のケースを掴み直すと、浩司に背を向けました。
「野の面談には、でく。お父さんにはついてきてほしくない」
「待て、美咲! 保護者同席が条件なんだぞ! 俺がかなきゃ面談すら受けられないんだぞ!」
浩司がろから叫びましたが、美咲は度と振り返りませんでした。
階段を駆けがる音が、まるで何かを振り払うかのように荒々しく響き、階のドアが乱暴に閉まりました。
リビングに残されたのは、散らばった類のと、青ざめた顔でち尽くす浩司だけでした。
私はキッチンのから、その景をじっと見つめていました。
をして仲裁に入ることは簡単でした。けれど、痛みを伴わなければ、浩司は自分が「父親という肩にあぐらをかいていたこと」に気づくことはないのです。
血の繋がりが与えてくれるのは、ただの戸籍の関係に過ぎない。
々の体温を分かちおうとしなかったが、な局面でだけ親の顔をしようとしても、子供のには届かない。
その残酷な真実が、散乱した類のにたく横たわっていました。