"「実の親じゃない」と夫に言われた日" 第2話
斎の机に溜まる封筒
翌朝からも、私は活のリズムを何つ崩しませんでした。
朝に起きて汁をとり、卵焼きを巻き、浩司と美咲の弁当箱に詰めました。
「おはよう、美咲。筒、お茶入れてあるからね」
「……うん。いってきます」
美咲は普段通りのさな声で靴を履いててき、浩司もまた、昨のことなど完全に忘れたような顔で朝刊に目を落としていました。
変えたのは、たったつだけでした。
リビングのカウンターには、昔から学や塾から持ち帰られるプリント類が集まる専用の製トレイがありました。
私は、そのトレイに触れるのを完全にやめました。
そのの放課、美咲がリビングのテーブルにぽつんと置いていった「希望調査票(最終案)」の入った角形号の封筒。
者面談の結果を受けた志望の判定シート。
駿台模試の成績表。
期講習の振込用。
それらを切封せず、端を綺麗に揃えて、階にある浩司の斎の机の真んに置きました。
パソコンのキーボードのすぐ、子に座れば絶対に界を遮る所です。
最初の数、浩司はそれに気づいてすらいないようでした。
「真紀、美咲の塾の期講習代って、もう振り込んでくれたか?」
夕、テレビのバラエティ番組を見ながら缶ビールをんでいた浩司が、気のない声で聞いてきました。
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以の私なら、「今振り込んできたわよ。先と相談して、苦な数学のコマをし増やしておいたから」と答えていたはずです。
ですが、私はシンクで器を洗いながら、静かに答えました。
「斎の机のに振込用を置いてあります。期は来週の曜みたいですよ」
浩司はリモコンを操作するを止め、怪訝そうに眉をひそめました。
「……あ、そう。机のに置いてあるのか」
「ええ。美咲のに関わる切なおですから。父親である浩司さんが内容を確認して、続きしたほうがいいとって」
嫌にならないよう、ただ淡々と事実だけをにしました。
浩司は何か言い返そうとをきかけましたが、昨自分のから放った「血の繋がった父親が決めるべきだ」という言葉をいしたのか、バツの悪そうな顔をして喉の奥で曖昧に返事を濁しました。
週が過ぎ、週が過ぎました。
浩司の机のには、未封の学の封筒が通、通と積みなっていきました。
浩司は毎晩遅くに帰宅し、「仕事がて込んでいる」と言い訳をして、それらに目を通そうとはしませんでした。
彼にとって「父親が決める」とは、面談の席で威厳のある父親らしく頷くことであって、々の細かな提期限を管理し、塾の面談を調するような臭い常を引き受けることではなかったのです。
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ある夜、美咲が階からりてきて、リビングのカウンターの周りを所なげに探していました。
「……あの、真紀さん」
「何? 美咲」
「学にす、健康調査票と庭環境票……ここに置いておいたんだけど、見てない?」
「お父さんの机のに置いてあるわよ。学の提類はすべて、お父さんが預かることになったから」
私がそう告げると、美咲は息を呑んだように目を丸くし、それからぎゅっと唇を噛み締めました。
「……あ、そっか」
美咲はそれ以何も言わず、踵を返して階へがっていきました。
階段をる音が、以よりもずっとたく響いていました。
私はキッチンの作業台にをつき、細く息を吐きしました。
胸ので、何度も痛みを伴う迷いが渦巻いていました。
(探してあげればいいじゃない。き方を教えてあげればいいじゃない。どうして子供を巻き込むようなたい真似をするの?)
けれど、ここで私がを伸ばしてしまえば、すべては元の歪な構造に戻るだけでした。
浩司が都のいいだけ親の権利を主張し、面倒な義務と責任だけを私に押し付ける。そして美咲もまた、「真紀さんは何でもやってくれる便利な」として、私との関係を曖昧にしたまま甘え続ける。
机のに溜まっていく未封の封筒は、浩司が放棄し、私に丸投げしてきた「父親の現実」
そのものでした。