みかん小説
本棚

"私の弁当に、店長の娘の名前" 第20話

あるの夕方、さんが休憩に自宅から持参したという、自作の『牛蒡と切り干し根の梅え』を、スタッフみんなに振るってくれた。 さっぱりとしていて、梅の酸が絶妙で、油っこい惣菜のにべると驚くほど箸がむ逸品だった。 厨の全員が「これ、絶対に売れるわよ!」と絶賛した。

翌朝、しく赴任してきた代の若い副が、その評判を聞きつけて厨にやってきた。 副はさんの梅えをべると、満そうに頷いた。

「これ、すごくいいですね! 来の舗限定メニューでしましょう。さん、レシピのメモを事務所に持ってきてください。企画は、正社員の僕の方で適当にまとめて本社にげておきますから」

副は何の悪気もなく、ごく自然にそう言った。 悪のない、無自覚な搾取。 現のパートがいついたさな果実を、正社員が「処理」という名目で自らの柄へと吸いげていく、この業界で何も繰り返されてきた当たりの景。

さんは、「あ、はい……私なんてパソコンもできませんし、よろしくお願いします……」と、さくなってをげようとした。 かつての私と同じように。波をてないために。

私は、作業台でパックに値札ラベルを貼っていたを止めた。

「副」

私の声に、若い副が振り返った。

広告

厨の佐藤さんも、リンちゃんも、作業のを止めてこちらを見つめた。

私はエプロンのポケットから、商品エントリー用の、まだ誰も何もいていない真っな企画提案用を枚取りした。 そして、戸惑った顔でち尽くすさんの元へと歩み寄った。

「さん……?」 さんがおどおどとした目で私を見げる。

私はさんの目を見つめ、優しく、しかし確かな力を込めて、そのいと本のボールペンを彼女の乾いたのひらに握らせた。

「さん。あなたが考えたんです」

私は微笑み、はっきりとした声で言った。

「あなたが作ったんです。自分の名を、自分でいてください」

さんの瞳がきく見かれ、やがてその目に、静かなが宿っていく。 厨の奥から、フライヤーのパチパチというよい音が聞こえていた。

私は作業台に戻り、再び、慣れ親しんだつきでパックにラベルを貼り始めた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: