みかん小説
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"私の弁当に、店長の娘の名前" 第18話

ただ、誰が何をしたのかを、正しく記録に残していただきたい」

「たかが名じゃないか!」 が震える声で叫んだ。 「たかがパートの名で、会社の何千万というプロジェクトを潰す気か! 君のちっぽけなプライドのために、みんなの努力を無駄にするのか!」

「たかが名、ではありません」

私は初めて、を真正面から見据えた。 その瞳を、逸らさずに言った。

「この先、私がこので何をしてきたのかと、娘に、あるいは誰かに聞かれたとき――もう度と、『私はただのお伝いでした』と言いたくないからです」

部のが、を打ったように静まり返った。 換気扇のい唸りだけが、くで聞こえていた。 は喉をヒクヒクとかしたが、もはや言葉を絞りすことができなかった。

その沈黙を破ったのは、く、震えるすすり泣きだった。

「……もう、やめて」

本里奈だった。 彼女は両で顔を覆い、肩を激しく震わせていた。 涙が指の隙からぼろぼろとこぼれ落ち、テーブルの類を濡らしていく。

「里奈、おは黙っていろ!」 が慌てて制止しようとした。 だが、里奈はそのを激しく振り払った。

彼女はちがった。 子が倒れそうになり、それを法務の社員が支えた。 里奈は涙でぐしゃぐしゃになった顔をげ、神部のにみた。

「……神部。

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さんのおっしゃる通りです」 「里奈!」 が鳴のような声をげたが、里奈はもう父親の顔を見ようとはしなかった。

「最初の試で部におしした弁当は、すべてさんが作ったものです」 里奈の声は震えていたが、言言がはっきりと部に響き渡った。 「私は、度も包丁を握っていません。現の数字も、何もりませんでした。父から渡されたメモを、パソコンで清しただけです……。部から代替材の宿題をされたときも、私は何つ自力で解決できませんでした。さんに泣きついて、断られて……それで、易なとろみをつけて誤魔化しました。先販売の失敗は、全部、私の無能さが招いた結果です」

「お……自分が何を言っているのか分かっているのか……!」 が崩れ落ちるように子に倒れ込んだ。

里奈はくをげた。に額がつくほど、々と腰を折った。 「さん……本当に、申し訳ありませんでした。私、自分がけなくて……自分が何もできないくせに、本社の正社員になりたいで、あなたの汗のに胡をかいていました。本当に……ごめんなさい……」

に落ちる涙の音が聞こえるようだった。 私は何も言わなかった。 ただ、をげ続ける歳の若い背を、静かに見つめていた。 そこにあったのは、勝利のではなく、い痛みを伴う救いだった。

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彼女はようやく、のではなく、自分のでそのにったのだ。

神部はゆっくりとちがった。 そして、テーブルの央に置かれていた確認を、無言で引き寄せた。

「法務」 部がく言った。 「この確認は無効だ。回収しろ」 「かしこまりました」

神部はを見ろした。その瞳には、侮蔑すらなく、徹なビジネスの判断だけがあった。 「本。社内コンテストの私物化、職権乱用による部の成果の横領、ならびに虚偽報告の疑いについて、事部およびコンプライアンスへ正式な調査を請する。から君は自宅待だ。引き継ぎの準備をしなさい」

は真っな顔をして、たださくをパクパクとかしていた。

そして、神部は私に向き直った。 その顔には、先ほどまでの徹さはなく、の料理を敬うような、い差しがあった。

「さん」 「はい」 「全国展の発売は、週延期する。各舗とには、私から説する。……君の本来のレシピと調理設計で、全国のラインを再構築したい。伝ってくれるか」

私は胸元にを当てた。 エプロンので、臓が力く脈打っていた。 「……はい。んで」

週。 『ハシモトマート』全百舗の惣菜売りに、あの弁当が斉に並んだ。

平台のに積みげられた、目調の素朴なパッケージ。

蓋には、きな文字で『ごろっと根菜と鶏肉の汁煮弁当』とかれている。 そして、容器の裏面に貼られた品質表示シールのに、さな、しかし確かな活字が印刷されていた。

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