"私の弁当に、店長の娘の名前" 第17話
次にペンを受け取った里奈のは、刻みに震えていた。 彼女は何度もペン先を躊躇させ、隣の父親のい線に促されるようにして、自分の名をき入れた。 その顔はまるで、自らの罪状認否に署名しているかのように青ざめていた。
「最に、舗協力者のさん」
がペンを奪い取るようにして、私のに差ししてきた。 「さあ、さん。ここに名をいて。これで全部終わりだ。みんな待ってるんだから」 の目が、瞳孔をいて私を射すくめていた。 『け、余計なことをするな』という無言の圧力が、針のように肌を刺す。
私は差しされたペンを受け取った。 指先に触れるプラスチックのたさが、現実のみを伝えてくる。
類を見つめた。 【厨試作・舗協力: 佐子】。 私の。 毎朝に起き、たい油の匂いを嗅ぎ、自転で帰るお客さんの背をい浮かべながら、指の皮がふやけるまで野菜を剥き続けた、私の。 それが、こののでは、たったの「協力」という言葉で片付けられようとしている。 このに署名すれば、私は永に「の栄のでおこぼれをもらったパート」としてきていくことになる。 そしてこれからも、誰かが私の成果を奪いに来るたびに、笑って譲り続けるになるのだ。
私は息を吸い込んだ。
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そして、持っていたペンを、静かにテーブルの央に置いた。
カチリ、とさな音が部に響いた。
「……さん?」 の声が擦った。 「何をしてるんだい。くきなさい」
私はペンを取らなかった。 両を膝のに揃え、背筋を伸ばした。 そして、テーブルの向こうに座る神部を、まっすぐに見据えた。
「署名できません」
部のの空気が、瞬で凍りついた。
「な……!」 がちがり、子がを激しく擦る嫌な音をてた。 「! 君は何を言っているんだ! 気が狂ったのか!? 全国の発売が来週に迫ってるんだぞ! こんなところで君が駄々をこねて、どうするつもりだ!」 「駄々ではありません」 私の声は、驚くほど澄んでいた。鳴りもしなかった。ただ、言言を丁寧に紡いだ。 「この確認にかれている役割分担は、事実と異なっています。だから、署名することはできません」
「事実と異なるとは何事だ!」 が机を叩いた。 「君は現で試作を伝っただろう! だから『舗協力』といてあるじゃないか! これ以、パートの分際で何を望むというんだ!」
「、座りなさい」 神部のややかな言が、の声を遮った。 部は微だにせず、私を見つめていた。 「さん。続けなさい」
私は神部に向かって、く礼した。 「神部。この弁当の企画は、最初から最まで私がで考え、試作したものです。
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具材の組みわせも、ミリの角切りも、煮汁をばす調理法も、すべて私がこのの厨で何週もかけて見つけしたものです。本里奈さんは、試作にも、メニューの決定にも、度も関わっていません」
「嘘をつくな!」 の顔がりと恐怖で真っ赤に染まった。 「部、騙されないでください! この女は、自分のアイデアがし採用されたからと調子に乗って、をせびるためにこんな壇で騒いでいるんです! 業務妨害です! 即刻解雇にしてください!」
「静かにしろと言っているんだ、本」 神部の目が、鋭くを射抜いた。 その気迫に気圧され、はをけたままち尽くした。
私は、息をえ、再び言葉を紡いだ。 胸の奥に溜まっていた、分の澱のようないが、言葉となって溢れしていく。
「神部。私は、自分を英雄にしてほしいと求しているのではありません。里奈さんが作ってくださった分析の資料や、本社のフォーマットにわせた美しい提案、それらの仕事まで否定するつもりはありません。里奈さんがやってくださったことは、ちゃんと『資料作成・分析』としてかれるべきです」
私はテーブルのの類を指差した。
「ですが、誰がこの商品をゼロからみし、誰がの責任を持ったのか。
その事実だけは、正しくいていただきたいのです。私が責任者になれなくても構いません。