みかん小説
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"私の弁当に、店長の娘の名前" 第16話

私はこの、何のためにきてきたのだろう。 婚して、頼る者もなく、幼い娘のを引いて京の郊に流れ着いた。 きるために必でエプロンを締め、誰よりもく勤し、誰よりも遅くまで油汚れをこすり落としてきた。 理尽な客にをげ、若い社員に呼び捨てにされ、それでも「雇ってもらえているだけでありがたい」と自分に言い聞かせてきた。 波をてず、謙虚に、さくなってきていれば、いつか報われると信じていた。

けれど、現実は違った。 私が謙虚になればなるほど、は私の元を踏み台にしていった。 私のは、誰かの都のいい免罪符にしかならなかった。

「もう、やめよう」

私は声にして呟いた。 震える指でノートの表を撫でた。 私は、誰かに施しを求めているのではない。 ただ、自分がここにって、汗を流してきたという事実を、自分ので守りたいだけなのだ。

翌の午、のバックヤードには、ただならぬ緊張が漂っていた。

午を過ぎた頃、事務所からてきたが、厨にいる私を招きした。 その顔は青く、目のには黒々とした隈が浮きていた。

「さん、ちょっと来なさい」

更の脇の暗い通で、は周囲を警戒するように声を潜めた。 「いいかい、からの会議だがね。

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本社の神部と、法務のが来る。全国展の最終確認に、君も『厨協力者』としてサインすることになっている」 「……はい」 「余計なことは切にするなよ。先販売のクレームの件は、の械トラブルと原材料のな品質良ということで、里奈がうまく報告をまとめた。全国展のラインも、当初の材調達先を増やすことで神部も納得しかけている」

は私の顔を覗き込み、脅すような、すがるような歪んだ笑みを浮かべた。 「ここで君がしくサインすれば、すべて丸く収まるんだ。には達成当が入るし、君のも来から円げてやる。……悪い話じゃないだろう? 歳のパートが、全国展の目玉商品に『協力者』として名を残せるんだ。これ以の名誉がどこにある?」

私は黙ってを見つめ返した。 円のアップ。協力者という名の付けし。 この男は、最まで私のをその程度の端で見積もっているのだ。 その傲さと浅ましさに、りすら通り越して、奇妙なほどややかな静寂が胸のに広がっていくのをじた。

「……ですね。失礼します」 私が背を向けると、は背から焦ったようにく唸った。 「分かってるんだろうな、! 騒いだら、君だけじゃ済まないんだぞ!」

午。

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の事務所の奥にある会議には、苦しい空気が満ちていた。

テーブルの奥には、商品発部の神部と、本社の法務コンプライアンスの男性社員が座っていた。 には、憔悴しきった本里奈と、脂汗を拭い続ける。 そして、端のパイプ子に私が座った。

テーブルの央には、みのあるファイルが冊置かれていた。 『全国舗展最終承認伺』。 その最のページに、クリップで留められた枚のい類があった。 商品発に関する権利関係と、発担当者のクレジットを正式に確定するための確認だった。

太い朝体で印刷された文字が、蛍灯のを浴びてくっていた。

【商品名:ごろっと根菜と鶏肉の汁煮弁当】 【企画・商品発責任者:本 里奈(商品発部)】 【厨試作・舗協力: 佐子( パートナー社員)】

「では」 神部が、徹な声でをいた。 「先テスト舗での品質に関する正計画は受領した。原材料の調達ルートを再編し、来週曜から全国百舗への斉納品を始する。……これより、最終確認の署名をう。この署名をもって、パッケージ裏面の印刷データおよび全社告のクレジットが正式に確定する」

法務の社員が、黒い性ボールペンを本、テーブルのに置いた。

「まず、舗責任者と、企画責任者の本里奈さん」

が真っ先にペンをに取り、慣れたつきで自分の名をき殴った。

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