みかん小説
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"私の弁当に、店長の娘の名前" 第14話

『以のテスト販売で美しかったのでまた買いましたが、全くの別物です。根がスカスカで、牛蒡の筋がに残って噛めません』 『汁のがく、化学調料のような自然な甘みととろみだけが目ちます。穀米もべちゃべちゃになっていて、とても最までべられませんでした』 『自転で持ち帰ったら、容器の隙から粘り気のある汁が漏れて、エコバッグが汚れました。のときは絶対に漏れなかったのに、なぜ改悪したのですか?』

文字が並ぶたび、事務所の空気が凍りついていった。 社内イントラネットの顧客満度評価は、・から、気に・へと急落した。 舗の惣菜売りでは、夕方のピークを過ぎても、平台のに積みになった『汁煮弁当』が売れ残っていた。 黄い「半額シール」が貼られても、客は見向きもしない。 かつて廃棄ロスゼロを誇ったあの弁当が、無残な売れ残りとしてゴミ箱へと運ばれていく。

「何かの違いだ……!」 事務所で、がを抱えて叫んでいた。 「のラインに問題があったんだ! それか、配送の温度管理だ! 里奈のレシピに問題があるはずがない!」 は話で、の品質管理担当者に向かって鳴り散らしていた。 だが、受話器の向こうから返ってくるのは、淡なデータと事実の報告だけだった。

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のオペレーションには何の瑕疵もない。すべて、提された仕様とレシピ通りに製造されている、と。

翌朝、の惣菜部は、苦しい沈黙に支配されていた。 先販売の失敗は、すでに全にれ渡っていた。 全国百舗への展は、発売まであとという段階で、事実の緊急凍結状態に陥っていた。

「さん……」 仕込み台の横で、佐藤さんが声で話しかけてきた。 「あのクレーム、見たわよ。お客さんって、本当に正直ね。誤魔化しなんて、べればすぐに見抜いちゃうんだから」 「そうですね」 私は、根の皮を剥きながら静かに答えた。 「舌は、嘘をつけませんから」

そのときだった。 バックヤードのい鉄扉がき、革靴の乾いた音が響いた。

入ってきたのは、スーツ姿の男たちだった。 先にっていたのは、商品発部の神部だった。 いつも静沈着なその顔に、抜きの刃のような鋭い緊張が漂っていた。 そのろには、本社の品質管理部の社員が、厳しい表で控えている。

「神部……!? どうして、わざわざ舗まで……」 事務所からびしてきたが、青ざめた顔で擦り寄った。 額にはべっとりと脂汗が浮いている。

神部は、の挨拶に返事すら模しなかった。 その徹な線は、を素通りし、厨の作業台へと向けられた。

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「本。本の午、本社で全国展の否を決定する緊急対策会議がかれる。そのに、確認しておきたいことがある」 神部の声はく、厨の換気扇の音を切り裂くように響いた。 「先販売の舗からがってきたサンプルを、今朝、発部全員で試した。……酷い来だったよ。根は繊維がんでっぽく、牛蒡はえぐみが残り、穀米は分を吸って団子になっている。何より、あの最初の試のときにじた、現の恵と客への敬が、微もじられなかった」

「そ、それはですね、急な代替材の配でのラインが混乱しまして! 里奈も懸命に調したのですが、何分にもがりず――」 「言い訳を聞きに来たんじゃない」 神部が歩、踏み込んだ。 「私が疑問にっているのは、材の質のではない。設計の断絶だ」

神部は胸ポケットから、ボロボロに折りたたまれた枚の用を取りした。 それは、最初の審査の際に提された、企画だった。 「最初のレシピは、自転のカゴの揺れまで計算し、ミリの角切りでのバランスを取り、鶏の皮のゼラチン質で乾燥を防ぐという、現で何も客を見続けてきたにしかできない驚異な設計だった。だが、今回の改訂版はどうだ? 都が悪くなれば片栗でとろみをつけて誤魔化し、スチーマーで蒸して終わりだ。

……これは、同じが考えたものとは到底えない」

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