みかん小説
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"私の弁当に、店長の娘の名前" 第13話

厨の奥で洗い物をしていたリンちゃんが、驚いて作業のを止めた。 私は作業用の耐袋をし、静かに里奈を見つめた。

「それが、惣菜を作るということです」 私の言葉は、く、かった。 「コンセプトやマーケティングの言葉は、綺麗です。パソコンの画面のなら、どんな理でも並べられる。でも、お客さんがにするのは、パワーポイントの文字ではありません。このプラスチックの容器に入った、たった個の根なんです」

私は試作台のに置かれた、煮崩れて濁った根を指差した。 「自転のカゴに入れて夜を急ぐが、アパートの部で蓋をけたとき、汁が漏れていたらしいいをする。歯のくなったお寄りが、筋ばかりのい牛蒡を噛んだとき、もう度とこので買いたくないとう。その最のの責任を引き受ける覚悟がないなら、最初からの企画に自分の名を乗せるべきじゃなかったんです」

里奈は息を呑み、唇を震わせた。 何かを言い返そうと喉をかしたが、言葉はなかった。 私の言っていることが、単なる嫌や趣返しではなく、彼女がで踏みにじった「現の真理」そのものだったからだ。

「……酷ですね、さんは」 里奈はぼろぼろと涙をこぼしながら、絞りすように言った。 「私を助けてくれたって、さんには何の損もないじゃないですか。

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どうしてそこまで固になるんですか。私が潰れたら、満なんですか?」 「損なら、とっくにしています」 私は答えた。 「私の名と、の誇りを奪われました。これ以、あなたに差しすものは何ひとつありません」

里奈は激しく首を振り、試作台のに散らばった材をそのままにして、厨から逃げるようにりっていった。 スイングドアが乱暴に揺れ、たいが吹き込んできた。

私はく息を吸い込み、散らばった参と牛蒡を黙々とゴミ袋に集め始めた。 が震えていた。 酷なだと罵られて、が痛まないはずがない。 私にも歳を過ぎた娘がいる。もし自分の娘が職で同じように追い詰められていたらとうと、胸が引き裂かれそうになる。 だが、だからこそ甘やかしてはいけないのだ。 の成果のにち、の汗を自分の柄にして得た栄など、いずれどこかでを殺す凶器になる。 彼女が自分でそのさに耐えられないのなら、今ここで崩れ落ちるべきなのだ。

そして、全国発売まで週を切った。 里奈は、独力で仕げたという「改訂版レシピ」を本社に提した。

彼女が選んだのは、もっとも易で、もっとも危険な妥協だった。 コストと納期をわせるため、処理のを極限まで削り、調料のを濃くすることで素材の質のをごまかす。

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煮崩れを防ぐためのの煮含めを省略し、用の型スチーマーでで加した野菜に、片栗でめのとろみをつけた煮汁をからかける。 それは、かつて私が何週もかけて試錯誤した「煮汁をばし、汁の旨を芯まで吸わせる」という繊細な設計とは、似ても似つかない代物だった。

神部の決断により、全国百舗での本発売をに、首都圏の型舗で、この改訂版レシピによる先テスト販売がだけ実施された。

初の夕方。 のバックヤードにある社内端末のに、が張り付いていた。 舗のPOSデータが、ごとに集計されて画面に反映される。

最初は、売れていた。 社内報やPOPによる々な宣伝効果もあり、棚に並べられた弁当は次々と買い物客のに取られていった。 「よし……! いけるぞ!」 は事務所で、拳を握りしめて歓声をげていた。 里奈もまた、本社の自席でその数字を見て胸を撫でろしていたに違いなかった。

だが、異変は翌の昼から始まった。

POSの売グラフが、目に見えて急を始めたのだ。 初に買った客が、度と買わない。 リピート率が、先テストの分の以にまで落ち込んでいた。 それだけではなかった。 本社の「お客様相談」の社内共掲示板に、先販売を実施している舗からのクレームが、異常なペースでき込まれ始めたのだ。

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