みかん小説
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"私の弁当に、店長の娘の名前" 第10話

壁に取り付けられたテレビでは、毎週曜に配信される本社の社内報画『Weekly HASHIMOTO』が流れていた。 普段は誰も気にも留めず、カップラーメンを啜ったり、スーパーのチラシを眺めたりしている帯だ。

だが今、休憩にいた、のパートたちは、全員が無言で画面を見つめていた。

画面のに映っていたのは、本里奈だった。 本社の真しいプレゼンルームで、清潔のあるいブラウスを着て、プロのでメイクを施された彼女が、満面の笑みを浮かべてインタビューに答えていた。

テロップが鮮やかに躍る。 『注目のルーキー! 現の潜ニーズを掘り起こした世代の商品発』

「――最初、舗の厨を訪れたときに気づいたんです」 画面のの里奈が、淀みのない美しい発声で語っていた。 「単の齢者や、忙しく働く女性たちが、本当に求めているものは何か。既の量産のお惣菜では届かない、庭の温もりと、翌に残さないジャストなサイズ。それを形にするために、何度も試作をねました」

「素らしいですね、本さん」 インタビュアーの広報部員が頷く。 「現のパートさんたちとのコミュニケーションで、苦労した点はありましたか?」

「そうですね」 里奈はしだけ困ったような、らしい笑顔を作ってみせた。 「現のベテランの方々は、どうしても今までのやり方に固執してしまう部分もありました。

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でも、『しいハシモトマートを作ろう』と何度もを伝えて、最終にはを取りって形にすることができました。この商品は、現の皆さんの汗と、私のいがつになった結晶だとっています」

画面が切り替わり、神部のコメントが流れた。 「彼女の柔な発力と、現を巻き込むには目を見張るものがある。今のが社を担う材だ」

休憩のは、を打ったように静まり返っていた。 換気扇の回る音と、テレビから流れる軽なBGMだけが響いている。 誰も、言も喋らなかった。 普段なら「里奈ちゃん、テレビ映りがいいね」「すごいねえ」と囃してるはずの同僚たちが、ただ苦しく俯いていた。

みんな、っているのだ。 先の神部の察の際、応接で何が起きたか。 自転のカゴの話をしたのが誰で、ミリ角の角切りの理由を答えたのが誰だったのか。 そして、この数週、厨の片隅で誰が切をさず、誰が夜遅くに泣きそうな顔で厨を訪れていたのかを。

彼女たちは決して愚かではない。 スーパーの現できてきた主婦たちの勘は、何が真実で、何が虚飾であるかを正確に見抜いていた。 だが、誰も何も言えなかった。 全国展が決まれば、に当がる。 ここで波をてれば、自分たちの活にね返ってくる。

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その現実が、彼女たちのをく閉ざさせていた。

私は黙って、持参したタッパーの米を箸でに運んだ。 がしなかった。砂を噛んでいるようだった。

ふと、隣に座っていた佐藤さんが、無言で自分のトレイから皿を差ししてきた。 綺麗に剥かれた、切れのリンゴだった。 佐藤さんは私の顔を見ようとはしなかった。 ただ、テレビの画面を見つめたまま、テーブルので私のエプロンの端を、ぎゅっと度だけ握りしめた。

その温もりが、痛かった。 責める気にはなれなかった。彼女たちには彼女たちの活がある。守るべき族がいる。 戦うことをできるはずがなかった。 これは、私の戦いなのだ。

そして週けの曜、事態は気に加速した。

「全舗への全国展が正式決定した。発売は週だ」

朝礼で、が興奮を隠せない様子で発表した。 全百舗での斉発売。テレビCMの放映も決まり、ハシモトマートの今期最の目玉商品として扱われることになったという。

だが、その栄の発表の直、本社の発部から緊急の連絡が入った。

調達部からの鳴だった。 全国百舗に毎並べるとなると、当初のレシピで指定していた『茨県産の特定契約農の根と牛蒡』の供量が、まったく追いつかないというのだ。

先テストの舗なら融通が利いたが、全国規模のサプライチェーンに乗せるには、絶対な数量がりない。

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