"私の弁当に、店長の娘の名前" 第8話
「だから……さん、お願いです」 里奈は両を握りしめ、をげた。 「全国展のラインに乗せるための、用レシピの最終調を伝ってください。私じゃ、量産用の調料の配比率がどうしてもわなくて……見をしても、何がりないのか分からないんです。このままじゃ、来週の最終プレゼンでボロがます。さんの名も、ちゃんと全国にますから。無駄にはしませんから……!」
私は元のを見つめた。 【本 里奈 / 佐子】。 並んだ文字を見つめているうちに、胸の奥からこみげてきたのは、謝でも堵でもなかった。 ややかな、侮蔑にいりだった。
「本さん」 私はを彼女に押し返した。 「連名、ですか」 「……はい」 「あなたが苦労してに入れた果実を、私に半分分けてあげる、とでも言いたいんですか?」 「えっ……そんなつもりじゃ――」 「私がゼロから作りげたものを、あたかもあなたが主導して、私が伝ったかのように偽装する。その片棒を、私自に担げとおっしゃるのね」
里奈の顔から、さっと血の気が引いた。 「違います! 私はただ、さんの権利を守りたくて……!」 「私の権利を守るなら、目にあるべき名は私のものだけです」 私の声は、く、しかし休憩の壁に鋭く反射した。 「あなたのしたことは、のに勝に入り込んで、具を自分の名札に張り替えたあと、『半分使わせてあげるから謝して』と言っているのと同じです。
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私のものを、あなたの親切で分けてもらう筋いはありません」
「さん、それはあんまりです!」 里奈の目から、ついに涙がこぼれ落ちた。 「私だって、必なんです! ここで失敗したら、私の半のインターンは何だったのってことになるんです! 本社で正社員になれるかどうかの瀬戸際なんです! さんはパートだから分からないかもしれないけど、私にとってはがかかってるんです!」
その言葉が、私の喉元に突き刺さった。 『パートだから分からないかもしれないけど』。 悪のない、無識の選民。 名学をて、本社の総職を目指す若いエリートにとって、郊のスーパーで油にまみれてきた女性のなど、最初から「守るに値しない軽いもの」に見えているのだ。 私のは、彼女のに比べて、そんなにも価値のないものなのだろうか。
「失礼します」 私はそれ以何も言わず、彼女の横を通り抜けてロッカーへ向かった。 背で、里奈が声を押し殺して泣く気配配がした。 胸が痛まないと言えば嘘になる。だが、振り返ることは絶対にできなかった。
そのの勤務終、私は再びに呼びされた。
事務所のドアをけると、はったまま、腕を組んで私を待ち構えていた。 その顔はりで赤黒く充血していた。
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「さん、君は何様のつもりだ」
挨拶もなしに、声がんできた。 デスクのには、先ほど里奈が見せてきた連名の企画が放りされていた。
「里奈が泣きながら話してきたぞ。君にをげて、連名にしてやるとまで言ったのに、酷に追い返したそうじゃないか」 「……お嬢さんに、何とお聞きになったかはりませんが、私は筋の通らない話をお断りしただけです」 「筋だと!?」 が机を拳で激しく叩いた。ドン、と鈍い音が響き、ペンてがねる。 「パートの分際で、偉そうに筋を語るんじゃない! 里奈がどれだけ君に気を遣って、をげたとってるんだ! 本社がパートの名を単独で企画に乗せるわけがないだろう! 連名にしてもらえるだけでも、に余る栄だとえ!」
私は両を太ももの横でまっすぐに伸ばし、拳を握りしめた。 りで全の血が逆流しそうだった。だが、決して取り乱してはいけないと、奥歯をく噛み締めた。
「に余る栄、ですか。私が考え、私が作り、私が売った商品です。なぜ私が、棒にけをかけられるような真似をされなければならないんですか」 「棒だと!?」 が歩詰め寄ってきた。脂ぎった顔が、私の目のに迫る。 「言葉を慎め! 誰のおかげでこのでも働けてるとってるんだ! シフトの融通も利かせてやった、娘の学の学費だって、このの料からてるんだろうが! 恩を仇で返す気か!」