みかん小説
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"私の弁当に、店長の娘の名前" 第6話

私は濡れた布巾を台のに置き、まっすぐに彼女の瞳を見つめ返した。

「自分で考えてください」

私のからた言葉は、自分でも驚くほどたく、乾いていた。

本里奈は息を呑み、胸のに抱えたノートパソコンをさらにく抱きしめた。 歳の、まだ学の柔らかさを残した頬が、みるみるうちに赤く染まっていく。 プライドを傷つけられた屈辱と、予の拒絶に対する戸惑いが、きな瞳ので激しく揺れていた。

「……さん」 里奈の声はかすかに震えていた。 「私、別に悪で言ってるわけじゃないんです。神部から、の朝までに原価の再試算をせって急に言われて……現の細かい調料の掛け率とか、材のロス率の計算は、実際に厨にっているに聞くのが番いって父も言っていて――」 「がそうおっしゃったんですか」 「はい。さんなら、全部に入っているからって」

私は作業台のに置いていた濡れ雑巾を、ゆっくりと裏返した。 ステンレスのたさが、ゴム袋越しにのひらへじんわりと伝わってくる。 私ののの識を、経験を、かけて積みげてきた勘を、まるで舗の備品か何かのように娘に差しそうとするの顔が、ありありと浮かんだ。

「本さん」 私は雑巾をかすを止め、彼女の顔をまっすぐに見つめた。

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「あなた、この企画の表に、もともと誰の名がいてあったかっていますか?」

厨の換気扇のい唸りだけが、のあいだに響いた。 里奈はきょとんとした顔をして、それから眉をひそめた。 「……え? 表ですか? 私の名と……さんの名が、協力者として入ってましたけど……」 「そうではありません」 私は歩、作業台かられて彼女へ歩み寄った。 「あの企画はね、私がチラシの裏にきでいて、に預けたものなんです。商品名も、具材の組みわせも、ミリの角切りも、煮汁をばす夫も、暮らしのが自転のカゴに入れて帰る姿をい浮かべて、私が何週もかけて試錯誤したものです」

里奈の唇が、さくいた。 「でも……父は、舗のみんなで考えたアイデアを、現の代表として私がまとめてプレゼン資料にしたんだって……」 「違います」 私は遮った。声を荒げるつもりはなかった。ただ、事実だけを、いをつずつ積みげるように言葉にした。 「最初から最まで、私の企画です。あの企画の目にあったはずの私の名を消して、あなたの名にき換えたのは、です。あなたはそれを、本当にらなかったんですか?」

里奈は息を吸い込んだまま、固まった。 パソコンを抱きしめる指先が、くなるほど張っている。

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彼女の表を見れば分かった。 すべてをって共謀していたわけではない。だが、々はづいていたのだ。 学をたばかりの自分が度も厨に入らず、スーパーの現のリアルな数字などつもらないまま、あまりにも完成された企画を渡されたとき、それが誰の血肉から削りされたものなのか、疑問にわなかったはずがない。 ただ、「父親が自分のために用してくれたチャンス」という甘い果実に、あえて疑問を持たないように目を瞑っていただけなのだ。

「私……」 里奈の喉がさく鳴った。 「私、そんな……名を奪うつもりなんて……」 「奪ったんですよ」 私は静かに言った。 「あなたが悪気を持っていたかどうかは、私には関係ありません。現実に、あの企画の目には、あなたの名が印刷されている。そして神部は、あなたがこの弁当を考えした才なルーキーだとい込んでいる」

里奈は線を落とし、元のタイルを見つめた。 その華奢な肩が、かすかに震えていた。 泣きしそうに見えた。 歳の、社会にたばかりの女の子だ。叱責されれば怖いだろうし、正の片棒を担がされていたとればショックも受けるだろう。 かつての私なら、ここで居たたまれなくなって、「ごめんなさい、言い過ぎたわね」「丈夫よ、数字のことは教えてあげるから」

と自分から折れて、相を慰めていたはずだ。 それが私のきてきたやり方だった。

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