"私の弁当に、店長の娘の名前" 第1話
午分。 勝のい鉄扉を引くと、夜のあいだにえ切った油の匂いがをつく。 、毎朝かいできた匂いだ。
更のロッカーに私物を放り込み、い作業着に袖を通す。 髪をのネットに押し込み、マスクをつける。 姿見に映るのは、どこにでもいる歳のパートタイマーの姿だった。
「おはようございます、さん」 「おはよう、佐藤さん」
歳になる佐藤さんが、すでに鍋に湯を沸かしていた。 京郊にある堅スーパー『ハシモトマート』。 私が働く惣菜部は、、揚げ油のパチパチという音と煮物の湯気に包まれている。
朝の仕込みはとの戦いだ。 のまでに、コロッケを揚げ、唐揚げを仕込み、筑煮を炊きげ、パック詰めして値札ラベルを貼る。 を休める暇など秒もない。
は千百円。 に働き始めたときは百円だったから、かけて百円がったことになる。 代の初めに婚して以来、私はこので娘の咲良を育ててきた。 その娘も今、私学のになった。
「私なんて、雇ってもらえているだけでありがたいから」
や本社のに対して、私はいつもそう言ってきた。 波をてず、余計な自己主張はせず、言われた仕事を黙々とこなす。
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それがパートとしてくき残る恵だと信じていた。 のあいだに、は代わり、副は代わった。 卒で入ってきた若い正社員たちが、私ので仕事を覚え、数で「主任」や「代理」になって別の舗へ栄転していった。 見送るたびに、私はエプロンのポケットでを握りしめ、笑顔で「おめでとう」と言ってきた。
けれど、私はただ漫然と野菜を切っていたわけではない。
がる曜は、揚げ物の売れきが落ちる。買い物客が傘を差して荷物を持ちたがらないからだ。 毎の支を過ぎると、しだけめの幕の内弁当から売れていく。 そして、夜半を過ぎてやってくる単のサラリーマンやOLは、の煮物パックには絶対にを伸ばさない。 残して蔵庫で腐らせるのが目に見えているからだ。 疲れて帰ってきた夜に、コンビニの濃い付けではなく、実のような汁の染みた野菜をべたい。 けれど、自分で煮物を作る気力はない。 売れ残って黄い「半額シール」が貼られた惣菜パックを見つめながら、私はずっとそのことを考えていた。
先の初め、本社から枚の通達が内の掲示板に貼りされた。 『全社・惣菜商品コンテスト』。 各舗からオリジナルの惣菜企画を募り、選考を通過した商品は全国の舗で定番化されるという。
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そして企画の提案者は、本社の「商品発部」の社内登用試験に推薦される。 応募資格の欄には、さくこうかれていた。 ――※契約社員、パートナー社員(パート)の応募も。
臓が、トクンとねた。
私はそのの夜、自宅のアパートの卓で、チラシの裏にボールペンをらせた。 作りたいものは、最初から決まっていた。 『ごろっと根菜と鶏肉の汁煮弁当(穀米)』。 の筑煮に、ほんのしの青菜のお浸しと卵焼き。そしてめてももちもちした穀米。 豪華な材は何ひとつ使わない。 鶏肉と、根、参、蓮根、牛蒡。 暮らしのが、夜の卓でべきれて、胃もたれせず、財布にも優しい百円の弁当。
翌週、私はの許をもらい、舗の片隅で限定のテスト販売を始めた。 初、午半に並べたは、分には完売した。 翌週、に増やした。午には空になった。 夕方からの販売を求める声が相次ぎ、週目には夕方にを追加した。 仕事帰りのスーツ姿の女性や、背を丸めた齢の男性が、迷わずに取っていった。 週連続で、廃棄ロスはゼロだった。
「さん、これ、ちょっとすごいことになってるよ」
巡回に来たエリアマネージャーが、売り台帳を見つめながら私のところにやってきた。
「来週、本社の発部がこのエリアの察に来る。この商品を、の正式なエントリーとして本部にげよう」