"失踪した兄へ父が送り続けた金" 第11話
兄がてったあと、父は寝込んだ。 母もショックで倒れた。 修平は、兄が残していった「千百万円の借」を、父の会社の正規の負債として処理し、何わぬ顔で川に残った。
そして、所や親戚に対しては、「兄が突然、勝にをてった」と言いふらしたのだ。
自分がき残るために。 自分が「な、残された孝息子」の座に収まるために。
第12話 宛名のない茶封筒
居のの空気が、く澱んでいた。 音だけが、障りなほどきく響いている。
私は、畳のに崩れ落ちている修平を見つめていた。 りすら湧いてこなかった。 あまりの浅ましさと、その浅ましさをも抱え込みながら両親の汚物を洗い続けていた弟の業のさに、ただただ背筋が凍りつくような寒気をじていた。
「……父さんは」
私は、乾ききった唇をいた。
「父さんは、気づいてたんじゃないの? あなたがやったってこと」
修平はさく肩を揺らした。
「……分からない。でも、親父は兄貴を追いして半くらいから、急に無になった。兄貴の部の荷物を元に戻して、『あいつの部には誰も入るな』って鍵をかけた」
父は気づいていたのだ。 会社のおの流れを精査すれば、専務だった也ではなく、次男の修平が何をやらかしたのか、経営者だった父に分からないはずがなかった。
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けれど、父もまた言えなかったのだ。 優秀な男を、自分の見当違いなりとプライドのせいで真の夜に叩きしてしまったなどと、病な妻に、親戚に、そして自分自に認められるはずがなかった。
だから父は、男を「探している」ふりをし続けた。 神社で絵馬をき、警察に形だけの捜索願をしながら、裏では館の森田に連絡を取り、毎息子の誕の翌にを送り続けたのだ。
『活』という、たった文字の言い訳を添えて。
「親父はさ……」
修平が、うようにして斎へ向かった。 け放たれたドアの向こうで、机の引きしを引っ張りす音がする。 やがて戻ってきた修平のには、さな真鍮の鍵がかかった、古い箱が握られていた。
「親父が息を引き取る、病で俺にこの鍵を渡したんだ。『机の奥にある箱をせ』って」
修平は震える指で鍵を回した。 カチリと乾いた音がして、蓋がく。
に入っていたのは、現でも、遺言公正証でもなかった。 茶の、し分い封筒が通だけ。
表にも裏にも、宛名はかれていなかった。 ただ、央に父の力い毛で、こう記されていた。
『也がこのをりたる、く者のにて処すべし』
「……親父は、分かってたんだよ」
修平が涙でかすれた声で言った。
「自分がんだあと、あの振込用が見つかることを。
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そして、いつか兄貴がそのをるが来ることをさ。親父は最まで、自分で謝ることができなかった。だから……これを残したんだ」
修平はその封筒を、私のに差しした。
「姉さんが持っててくれ。俺には……これをける資格なんてない。見る資格すらないんだよ」
私はその茶封筒をに取った。 ずっしりとしたみがあった。 が入っているのか、それとも別の何かなのか。 封は、しっかりと糊付けされたままだった。
私は封筒を握りしめたまま、スマートフォンの画面を点灯させた。
刻は午。 田の国沿い、あのトタン根のプレハブは、今頃どんないに包まれているだろうか。
私はメッセージアプリをき、昨メモ帳に控えた兄の話番号宛てに、いショートメッセージを打ち込んだ。
『来週の曜、実の解体の引き渡しがあります。 母さんの回忌の法も、そのに居でうことにしました。 父さんが、あなた宛てに通だけを遺しています。 もし来ないなら、私はこのの庭で、父さんのをお母さんの遺ので燃やします』
送信ボタンを押すと、の夜の静寂のに、微かな子音が響いた。
送信完の文字を見つめながら、私は目を閉じた。 、嘘と沈黙で塗り固められてきた川のが、音をてて最の所へと転がり始めていた。
第13話 空っぽの居と黒い革靴
実の解体と引き渡しを控えた曜の朝は、ひとつないれだった。