"追い出した妻の味を食べる夫" 第13話
優との切ないを、あいつへの復讐の刃に研ぎ澄まして、弁当箱に詰め込んだのか?
「……っ、う……」
突然、喉の奥から込みげてくるものがあり、私は元をで押さえた。
胃ののものが逆流しそうになる。
シンクのたい縁に両をつき、荒い息を吐きした。
が震えていた。
止まらなかった。
「み咲ちゃん!?」
背から良子さんの叫び声が聞こえた。
「ちょっと、どうしたの!? 顔が真っ青じゃないか!」
「……なんでも、ありません。し、ちくらみが……」
ちがろうとした瞬、の力が抜け、私はそのにへたり込みそうになった。
良子さんが慌てて私の体を抱きとめてくれた。
その、私の腕の袖がめくれがった。
、仕込みの最に油がねてできた、赤く腫れがった傷の痕がわになった。
「まあ……! こんな酷い傷して! み咲ちゃん、なんで言わなかったの!?」
「あ……これ、昨の片付けのにし……したこと、ないですから……」
「したことあるわよ! ぶくれになってるじゃないの!」
良子さんは半ばったような顔で、私のを引いて居へと連れてった。
救急箱から膏とガーゼを取りし、際よく私の傷の当てをしてくれる。
良子さんの指先はさくて、温かかった。
に、ので凍えそうになっていた私を拾い、温かい呂に入れてくれたと同じ、母親のようなの温もりだった。
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「み咲ちゃん」
包帯を巻き終えた良子さんが、私の目をまっすぐに見つめた。
その瞳には、いしみと、すべてを見通しているような慈が宿っていた。
「最のあなた、しおかしいよ」
「……え?」
「目がね、のうちに来たばかりの頃みたいになってる。何かに怯えて、何かにって、自分をギリギリまで追い詰めてる。あの弁当を作り始めてからだよ」
私は言葉を失い、俯いた。
良子さんは私のたいを、両で包み込んだ。
「誰のために、あんなに必になってるの? 自分を傷つけてまで、誰に何を証しようとしてるの?」
答えられなかった。
唇を震わせても、声が文字もてこない。
その、引き戸がガラリとき、鉄さんが入ってきた。
仕入れから戻ったばかりの鉄さんは、靴のままにち、私と良子さんをじっと見ろしていた。そのには、オオタニ・フードクリエイトの納品伝票が握られていた。
「母ちゃん、ちょっと奥にっててくれ」
鉄さんの声は、いつになくく、かった。
良子さんは私を気遣わしげに見つめながら、静かにちがり、奥の部へと姿を消した。
厨と居を隔てる暗い空に、私と鉄さんのだけが残された。
鉄さんは無言のまま、のパイプ子を引き寄せて腰をろした。
ポケットから煙を取りし、ジッポライターでをつける。
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煙が井の蛍灯に向かって、細くちっていった。
「将……仕込みの続き、すぐやりますから……」
私がちがろうとすると、鉄さんは煙をくわえたまま、をげてそれを制した。
「座ってろ」
く、しかし抗えない力を持つ声だった。
私は再び、畳のに正座した。
鉄さんはく煙を吸い込み、皿にを落とした。
「あのビルので、何があった」
臓がねた。
「……え?」
「とぼけんな。週、のに裏のパーキングにまってた黒いだ。お、あのの男と目がってから、ずっと様子がおかしい」
鉄さんは、すべてを見ていたのだ。
あのの、私が肉の箱を抱えてち尽くしていたことも、健のがりっていったことも。
「って名の会社だ。おさんの名字もだ。……あの社が、おさんをのに放りした元の旦だな」
喉がカラカラに乾き、息が詰まった。
「……将、私……」
「謝るな。ってるわけじゃねえ」
鉄さんは煙をもみ消し、両肘を膝について、私を真正面から見据えた。
その頑固徹な瞳に、迷いはなかった。
「納品契約は、今で切る」
「えっ……!?」
私はわず顔をげた。
「待ってください! の固定売は、今の鳥鉄にとって事な柱です! 将が腰を痛めてるのに、私が勝な都で穴をけるわけには――」
「馬鹿野郎」
鉄さんが鳴った。
声が狭い内に響き渡り、私はびくっと肩を竦めた。
だが、鉄さんの表に浮かんでいたのは、りではなく、痛切な苦渋だった。