"父の葬儀で離婚を迫った夫" 第19話
「渡辺さん。……自分の子供のの境に、契約を優先して平然と現れるような男なら、私は今、サインをしなかったでしょう」
「植専務……」
「都発とは、命を育むを作ることです。族の命に責任を持てないに、数百億のづくりの責任が持てるはずがない。……それに、ご覧なさい」
植専務は、私が差ししたファイルを指かした。
「社がであっても、この類の分の隙もない美しさ。これだけの準備をえ、逃げずに堂々と真実を語る奥方がいる。……これ以の『与信』が、どこにありますか」
植専務は私に向き直り、優しく頷いた。
「待ちましょう、彩佳さん。坂社の到着を、分待ちます」
「……ありがとうございます」
私がく礼をした瞬、会の空気が気に弛緩した。 役員たちが胸を撫でろし、子は信じられないものを見るように私を見つめていた。
そして、午分。
バタン、と会議のい方扉がいた。
息を激しく乱し、額に汗を滲ませた港がっていた。 ネクタイは曲がり、着の裾には皺が寄っていたが、その瞳には逃げのない覚悟が宿っていた。
港は会の線をに浴びながら、壇の植専務のまで真っ直ぐにみた。 そして、に膝をつかんばかりの勢いで、々とをげた。
「植専務、皆様……! 私の個な事により、なご迷惑をおかけしましたこと、よりお詫び申しげます!」
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「坂社」
植専務が静かに声をかけた。 「お子さんは?」
港は瞬息を詰まらせ、掠れた声で答えた。
「……無事に、まれました。千百グラムの未熟児ですが、産声をげてくれました。母子ともに、峠を越えました」
会から、自然とさな拍が湧き起こった。 植専務が微笑み、デスクの万をに取った。
「それは畳でした。さあ、席につきなさい。あなたの素らしい奥様が、完璧な台を守って待っていてくれましたよ」
港は弾かれたように私を見た。 その瞳には、言葉では言い尽くせない謝と、自責のが溢れていた。
私は何も言わず、ただ元のファイルを港のにいて置いた。 署名すべき箇所に、付箋が綺麗に貼られている。
港は震えるで万を握り、自らの名を力くき込んだ。 続いて植専務が署名し、契約が交わされる。
「座複都更プロジェクト、これにて正式にといたします」
司会の声とともに、会全体が割れんばかりの拍とフラッシュのに包まれた。 坂建設の役員たちが涙を流して握を交わし、子は堵のあまり子に座り込んで掌していた。
誰もが歓に沸くその輪ので、私だけが、静かに歩、ろへとがっていた。
私の、すべての仕事が終わった。
◇
調印式の記者会見と懇談会が終わり、関係者たちがった。
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都所本社の最階にある、さな控に、私と港のがいた。 窓からは柔らかな午のが差し込み、をき交うがく豆粒のように見えている。
港はソファーに座り、両で顔を覆ったまま、い沈黙のにいた。 スーツを脱ぎ、ワイシャツの袖を捲りげたその姿は、疲れ果て、魂が抜け落ちたようだった。
「……彩佳」
やがて、港が顔をげた。 その目には、真っ赤な充血とともに、止め処なく涙が溢れていた。
「病院で……あの子のさなを握った、俺は初めて、自分がどれだけ恐ろしいことをしてきたのかをいった」
港の声が、震えていた。
「俺は、自分の子供を『坂の跡継ぎ』という具としてしか見ていなかった。美優のことも、自分の欲望を満たすための具に過ぎなかった。……そして、おのことを……」
港はソファーから滑り落ちるように、に両膝をついた。 かつてアパートのでを突きつけてきたの卑しさはない。 ただ、自らの罪のさに打ちひしがれた男の姿だった。
「おがどれだけのいで、あのにいてくれたのか。俺がで偉そうにしている、母さんの理尽に耐え、を被り、俺のりないところをすべて埋めてくれていた……。今の調印式だってそうだ。おがいなければ、俺はすべてを失っていた」
「ってください、坂さん」