"父の葬儀で離婚を迫った夫" 第15話
子の自分に向ける値踏みするような、品のない線。 自分がに入れようとしている『社夫』という子が、針の筵でしかないことに。
「私はね、契約期が終わったら、秒の迷いもなくあのをるわ」
私はまっすぐに美優の目を見据えた。
「頼まれたって戻らない。港さんがどんなに座しようが、度とあの男の妻にはならない。……だからして。私はあなたの邪魔なんてしない」
「じゃあ……じゃあ何で……」
「私が取り戻したかったのは、夫じゃないわ。奪われた私の尊厳と、自分のよ。……あなた、奪い取ったつもりのその男を抱えて、あのでを啜る覚悟はあるの?」
美優は言葉を失い、ただガタガタと全を震わせていた。 彼女が必に勝ち誇り、私を見すために掲げていた『妊娠』という武器が、今や彼女自を縛り首にする縄に変わっていた。
私は伝票をに取り、ちがった。
「体に気をつけて。まれてくる子供に、罪はないのだから」
それだけを言い残し、私はレジで自分の分の会計を済ませてをた。 からへとがる階段をると、の澄んだが頬を撫でた。 美優の破滅は、私がをすまでもなく、彼女自が選んだ傲の結末として、静かにをけて待っていた。
◇
『あと3』。
坂の客で、私は着々と荷造りをめていた。
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持ち込むのトランクつに、最限のと仕事具を詰める。 斎に置いてあった私個の建築関係の専も、段ボール箱にまとめ、すでにアトリエ・ハセガワの事務所宛てに発送の配を済ませていた。
洗面台に置いてあった私の歯ブラシは、すでに使い捨てのトラベルセットに替えてある。 私の痕跡は、このから急速に消えりつつあった。
夜過ぎ。 ノックもなしに、客のドアがガラリといた。
っていたのは港だった。 着を脱ぎ捨て、ワイシャツのボタンを胸元までしている。 には、えたミネラルウォーターのボトルが握られていた。
「……何をしているんだ」
部の隅に置かれたトランクと、綺麗に片付けられたデスクを見て、港の声が張った。
「見ての通りです。荷造りをしています。が都所との本契約ですから」
「……まだ、あるだろう」
「当に慌てるのは嫌ですので」
私は事務に答え、クローゼットからハンガーをした。 港は部の央まで入ってくると、どこか落ち着かない様子で部を見回した。
「母さんが……最、しいだろう」
「そうですね。私に関わらないよう、あなたが言ってくれたのでしょう」
「ああ。もう母さんの好きにはさせない。……それから、おの父親の墓のことだが」
港が、ふと線を落とした。
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「先週、仕事のにでってきた。……線をあげて、をわせてきたよ」
私のが、わずかに止まった。
「……なぜ、そんなことを」
「謝りたかったんだ」
港の声は、掠れていた。 かつての威圧や傲さは完全に消え失せ、そこには途方に暮れたの男がいるだけだった。
「葬儀ののこと……俺は本当に取り返しのつかないことをした。都所の専務からおの話を聞くたびに、自分がどれだけ愚かだったか、いらされるんだ。……おがどれだけ俺を支えてくれていたか、どれだけ坂建設のために尽くしてくれていたか……俺は、何つ見ようとしていなかった」
港は歩、私にづいた。 その目には、本物の悔と、すがるような懇願のが浮かんでいた。
「彩佳。政婦の飯はくてえないんだ。のはめちゃくちゃだし、母さんは毎ヒステリーを起こすし……会社にっても、美優からは毎泣きつかれて気が狂いそうだ。……俺には、おが必なんだよ」
「……」
「頼むから、考え直してくれないか? ヶの契約なんて言わずに、もう度、やり直そう。美優の子供には養育費だけ払って、認も最限にする。母さんとも別居したっていい。おが望むなら、おの好きな設計の仕事を続けたって構わない! だから――」
「坂さん」
私は静かに、彼の言葉を遮った。 港が息を呑み、固まる。
「お父さんのお墓参りにってくださったことは、謝します。ですが、勘違いしないでください」
私はベッドののカレンダーを指差した。