みかん小説
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"父の葬儀で離婚を迫った夫" 第8話

『ちょうどね、シニア向けのバリアフリー改修の案件が増えていて、細やかな線が引けるが欲しかったのよ。ただし、いきなり正社員は無理よ? 最初はパートタイムから。ポートフォリオも見せてもらうわよ』

「はい! んで作ります。何でもやります」

『決まりね。ヶ、待ってるわよ。……いろいろ変だったんでしょうけど、声に芯があるわ。昔のあなたより、ずっといい顔をしてるんじゃないかしら』

通話を終えた、界がわずかに滲んでいた。 父が残してくれたのは、でも豪邸でもない。 にまみれても決して失われない、私自の腕と、誇りだったのだ。

私は机ののスケッチブックをき、父の形見である製図用のシャープペンシルをらせ始めた。 ヶ、私はこのをる。 その、私には帰るべき所と、自分のでつためのが用されている。

コンコン。

乱暴なノックの音が、私の集を遮った。

ドアをけると、そこには仕ての良いスーツにを包んだ港がっていた。 には、級ブティックの袋が提げられている。

「今夜、都所の懇親会だ。半に広尾のフレンチを押さえてある」

港は袋を客のベッドに無造作に放り投げた。

「に入っているドレスを着ろ。専務夫妻だけでなく、主な資元の役員も来る。

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……いいか、彩佳」

港は私のにち塞がり、見ろすようにたい線を向けた。

「今夜はおを品定めするじゃない。坂建設の社夫妻が円満であるという『絵』を見せるためのだ。余計なを利くな。誰かに話しかけられたら、ただ微笑んで頷いていろ。俺の顔にを塗るような真似は絶対に許さないからな」

相変わらずの命令調だった。 自分がどれほど脆いのにっているかも忘れ、私をただの所物として扱おうとする傲さ。

私はベッドのの袋を瞥し、静かに言った。

「そのは着ません」

「……何だと?」

「派すぎて、都所の専務夫妻の好む趣ではありません。私の装は私が決めます。約束通り、妻としての役割は完璧に果たしますから、ししないで」

「彩佳、いい加減にしろ! 俺がをして用したんだぞ!」

「それなら、会社にいる桜井さんにでも差しげたらどうですか?」

私の放った名に、港の言葉が喉に詰まった。 彼は忌々しそうに舌打ちをすると、踵を返して吐き捨てた。

「……勝にしろ。もし粗相があったら、婚の条件は見直すからな」

バタンとドアが閉まる。

私はベッドのの袋を端へ除けると、自分のトランクをけた。 取りしたのは、結婚に自分で購入した、仕ての良い濃紺のシンプルなセットアップだった。

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華美な装飾はないが、質なシルクウールで仕てられ、襟元のカッティングが首筋を凛と見せてくれる着。

鏡のにち、髪をろでタイトにまとめる。 元には、父が、歳の誕に買ってくれたさな本真珠のピアスをつけた。

誰かの飾り物ではない。 条彩佳としての姿で、私はそのへ向かう。

◇

広尾の閑静な宅に佇む、完全会員制のフレンチレストラン。 緑に囲まれたエントランスには級が並び、柔らかな接照が造りのアプローチを照らしていた。

個に通されると、すでに都所の専務・植とその妻・容子、そして数名のコンソーシアム幹部が揃っていた。

「これはこれは、植専務。本は貴なおをいただき、より謝申しげます」

港は入するなり、揉みをせんばかりの勢いで々とをげた。 先ほどまでの庭内での尊な態度は消え失せ、完璧な『やりの若経営者』の仮面を被っている。

「いやあ、坂社。お忙しいところわざわざ恐縮です。どうぞお座りください」

髪交じりの品な貌をした植専務が微笑み、その線が港の隣につ私に向けられた。 港が慌てて私をに押しすようにを添えた。

「内の彩佳です。普段は庭におりまして、このような華やかなには慣れでございますが……」

港が私の発言を封じるように先回りして予防線を張る。 だが、その言葉が終わるか終わらないかのうちに、専務の隣に座っていた妻の容子が、目を見張ってちがった。

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