みかん小説
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"二年間買い続けた夫の浮気相手" 第18話

あの男が作った『おがおかしい』という物語を、と数字で枚ずつ解体していくのよ」

美穂はメモを両で握りしめ、胸に押し当てた。 粒の涙が、の端を濡らしていく。

「どうして……」

美穂の喉から、震える声が漏れた。

「どうして、私なんかに、そんなことを教えてくれるんですか……? 私、あなたの庭を奪ったんですよ? あなたを獄に突き落としたんですよ? 見捨てたって、誰もあなたを責めないのに……」

私は作業台のに散らばる、の破片に線を落とした。

ヤスリで削られ、角を落とされ、ようやく滑らかな輝きを持ち始めた属。 痛みを経験したからといって、が誰でも崇になれるわけではない。 私のには今でも、この女に対するどす黒いりが沈殿している。

「勘違いしないで」

私は淡に言った。

「あなたを助けたいわけじゃないわ」

顔をげた美穂に、私は容赦のない言葉を続けた。

「あの男がね、またの女を自分の都のいい悪者に仕てげて、無傷で逃げおおせる姿を、見過ごしたくないだけよ。そして何より……」

私は言葉を切り、アトリエの窓のを見つめた。 夕暮れのを、ランドセルを背負った学たちが笑いながら通り過ぎていく。

「子供に、親の勝な罪を背負わせたくないのよ」

健はきっと今、実で歳の翔太のを撫でながら、こう吹き込んでいるはずだ。

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『お母さんは病気なんだよ』 『お母さんがおを捨てたんだ』 『お父さんだけが、おの方だからな』

かつて私を「子供も産めない役たず」と切り捨てた男が、今度はその子供を自分の保のための盾として使っている。 その勝さに、胃が焼き切れるほどの嫌悪を覚えたのだ。

「きなさい」

私は美穂に背を向けた。

「弁護士と支援センターの相談窓は、今のまでいてるはずよ。泣いている暇があるなら、自分のでりなさい」

美穂はちがった。 々と、額がにつきそうなほどくをげた。

「……ありがとうございます」

カチャリとドアが閉まり、音が階段を駆けりていくのを聞きながら、私はく息を吸い込んだ。 え切った指先をストーブにかざすと、赤く灯るが、皮膚の奥へとじんわりと染み込んでいった。

庭裁判所の調のは、と何も変わらない、乾いた静寂に包まれていた。

壁に掛けられた計の秒針が、無質な音を刻んでいる。 私は廊の子に腰をろし、黒いトートバッグを膝のに抱えていた。

私がここに来たのは、美穂の付添としてではない。 調委員から「当の婚協議に関する事実確認」の参考として、面での報提供を求められ、その確認と提のためにを運んだだけだった。

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健が「妻とは円満に協議婚した」「妻の緒定が原因だった」と虚偽の主張を繰り返していたため、私の弁護士を通じて当の正式な公正証と陳述を提する必があったのだ。

調のい扉がき、から健がてきた。

仕てのいいチャコールグレーのスーツ。 だが、のような傲な余裕は、その顔のどこにも残っていなかった。 目のには濃い隈が張り付き、額には脂汗がっている。 元のブリーフケースを落ち着きなく握り直しながら、苛たしげに貧乏ゆすりをしていた。

ふと顔をげた健の線が、廊のベンチに座る私を捉えた。

その瞬、彼の表が引きつった。 幽霊でも見たかのように目を見き、ぎこちない取りで私へとづいてきた。

「……子? なんで、おがここにいるんだよ」

掠れた、湿っぽい声だった。

私はちがらず、見げるようにして彼を静かに見据えた。

「調委員の方に、の事実関係を確認されたからよ。あなたの提した類に、随分と事実と異なる記述があったみたいだから」

健の顔が、りと焦燥で赤く染まった。

「お……まさか、あいつに肩入れしてるのか? 田美穂の肩を?」

彼は周囲を気にしながら、声をく落として詰め寄ってきた。

「正気かよ! あいつはおの庭を壊した棒猫だぞ! おの体のことをで笑ってたような女だ! それを……元夫の俺を陥れるために、あんな女に方するのか!?」

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