"二年間買い続けた夫の浮気相手" 第17話
私は子からちがり、元で震える彼女を見ろした。
を差し伸べて抱き起こすこともしなかったし、「丈夫よ」と気休めの言葉をかけることもしなかった。 ただ、めきった自分のコーヒーカップをソーサーに戻し、く息を吐きした。
「ちなさい、美穂さん」
私の声は、く平坦だった。
「ここで泣き喚いても、子供は戻ってこないわよ」
美穂は涙に濡れた顔をげ、すがるような目で私を見た。
「でも……健さんは実に翔太を連れてって……あそこは、両親もあのの言いなりで……! 私、どうしたらいいか……」
「ここはの目があるわ。荷物をまとめて」
私はテーブルのに千円札を枚置き、自分のコートを羽織った。 に転がっていた母子帳を拾いげ、埃を払って美穂の胸元に押し付ける。
「私の仕事に来なさい。話はそこで聞くわ」
私のアトリエ兼作業は、駅から歩いて分ほどの古い雑居ビルの階にあった。 飾り気のないドアをけると、属を削るオイルと、わずかなハーブティーのりが混ざりった空気が漂っている。
美穂はを啜ってきたような取りで部に入り、勧められた丸子のに、さくを縮めて座った。 私はポットからいほうじ茶を注ぎ、彼女のに置いた。
「言っておくけれど」
私は作業机の引きしから、冊の分いクリアファイルを取りしながら言った。
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「私はあなたにおを貸す気はないわ。健さんの実に乗り込んで、代わりに子供を奪い返してあげる気もない」
美穂は湯気のつ湯呑みにを添えながら、青い顔でさく頷いた。
「はい……そんなこと、お願いできる分じゃないことくらい、分かってます……」
「じゃあ、何を求めてるの?」
私の鋭い問いかけに、美穂は唇を噛み締め、線を宙に彷徨わせた。
「……あのは、嘘をつくのがうまいんです」
絞りすような声だった。
「話しいになっても、いつも私がヒステリーを起こしているように仕てげられて、周囲のもみんなあのの方になってしまう……。保育園の先だって、健さんが派なスーツを着て、困ったような顔で『妻が精神に定で』って言ったら、信じて子供を引き渡してしまったんです。私、どうやってあの嘘と戦えばいいのか、分からないんです……」
私は元のファイルをいた。 パラパラと音をててめくられるビニールポケットのに、の記憶がそのまま閉じ込められていた。
「健さんのはね、いつだって同じよ」
私は枚の類を指先で叩いた。
「自分から直接をすことはしない。相の些細な言やの揺らぎを誇張して、『相に非があるから自分は仕方なくした』という構図を先に作るの」
美穂が目を見張った。
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「私が癌になったもそうだったわ。私がホルモン剤の副作用で泣いたり、痛みに耐えかねて音を吐いたりした瞬を、あの男は帳に細かくメモしていたのよ。『妻の緒定により庭崩壊の危』ってね。調のでそれを提して、自分を劇の夫に仕てげようとした」
「健さん……そんなから……」
「あの男が番恐れているのはね、法な正義でも、徳な正しさでもないわ」
私は美穂の瞳を真っ直ぐに見据えた。
「『自分が悪者としての目に映ること』よ。それだけを何よりも恐れているの。だから、に鳴り込んだり、泣き落としをかけたりしたら、相のう壺よ。『ほら見ろ、母親はこんなに錯乱している』と周囲にアピールする材料を与えるだけだわ」
美穂の息が詰まる。
「じゃあ……私はどうすればいいんですか……? 翔太は、今夜もあそこで……」
「事実だけを、系列で突きつけるのよ」
私はスマートフォンを取りし、画面をタップした。
「私が婚したに担当してくれた、女性の権利と庭問題を専にしている調委員の先がいるわ。今は民のシェルターや法テラスと連携して、親権紛争のサポートをしているよ。連絡先を教えてあげる」
美穂のが震えた。
「私に……そんな……」
「話しなさい。今すぐ」
私はメモ用に名と番号をき殴り、美穂のに滑り込ませた。
「園先が勝に子供を引き渡した経緯、あなたが精神疾患など患っていないことの医師の診断、そして何より、健さんが活費を入れずにあなたを追い詰めていた客観な座記録を揃えるの。