みかん小説
本棚

"二年間買い続けた夫の浮気相手" 第13話

痛い目を見せてやらなきゃ分からない。 かつて、私に対して向けられていたものと、まったく同じ刃だった。

「健さん」

私は静かに言った。

「度と、私に話してこないで」

「おい、子……」

「あなたの声を聞くだけで、虫唾がるわ。次に着信があったら、弁護士に連絡して接禁止の申してをします。私のに、度とその汚いを突っ込まないで」

私は通話を切った。 そして、今度こそ迷うことなく、その番号を着信拒否リストに登録した。

スマートフォンを机のに放りすと、呼吸が浅くなっていることに気づいた。 りで指先が刻みに震えている。 だが、そのりは、のような絶望なしみとはまったく違っていた。

胸の奥にあったのは、底れぬ寒気だった。

美穂が病院で言っていたことは、言の狂いもなく真実だったのだ。 あの男は、の私にしたことと寸分違わぬで、今度は美穂を追い詰め、そのを消しろうとしている。 自分だけが無傷で、清潔な被害者の顔をして、次の拠り所を探しながら。

私はちがり、アトリエの引きしをけた。 奥底に眠っていた、あのつ折りの片を取りす。

震える跡でかれた、携帯話の番号。

『もし、いつかあなたが当のことをりたいとうが来たら、ここに連絡をください。

広告

すべて、お話しします』

私はスマートフォンをに取り、その番号を画面に打ち込んだ。 呼びし音を鳴らすに、度く目を閉じた。

美穂を助けるためではない。 あの女に同したからでもない。

ただ、健という男が勝に編集し、私たちの女に押し付けてきた「嘘の歴史」を、そのままにしておくことが、どうしてもならなかったのだ。

翌週の曜、午。

都のターミナル駅から私鉄で駅ほどれた、昔ながらの商の裏。 褪せたレンガ造りのビルの半に、その純喫茶はあった。 平の途半端な帯ということもあり、暗い内には客の姿はまばらで、く流れるバロック音楽と、古びた焙煎の微かな音だけが空を満たしていた。

奥のボックス席に、美穂はすでに座っていた。

私が階段をりて扉をけた瞬、カランと鳴ったドアベルに反応して、彼女はびくりと肩をねさせた。 着古したグレーのタートルネックセーターに、黒いスラックス。 化粧気のない顔は相変わらず青かったが、病院で会ったのような、今にも倒れそうな定さはしだけれていた。

私が席にづくと、美穂は弾かれたようにちがり、々とをげた。

「……お忙しいところ、来ていただいて、ありがとうございます」

広告

「座って」

私はく告げ、向かい側のえんじのベルベットのソファに腰をろした。 づいてきた老仕にブレンドコーヒーをつ頼み、コートを脱いで膝のに置いた。

美穂は両をテーブルので固く握りしめ、線を落としたまま微だにしなかった。 目のに置かれたアイスティーのグラスの表面に、滴がびっしりとついて、コースターを濡らしている。をつけた形跡はなかった。

「話、驚きました」

美穂が、掠れた声でをいた。

「もう度と、連絡をいただけるなんてっていなかったので……」

「勘違いしないで」

私は運ばれてきたコーヒーにを触れず、彼女を真っ直ぐに見据えた。

「あなたを許す気になったわけでも、あなたの力になりたくて呼んだわけでもないわ。ただ……確かめたいことがあったの」

美穂はさく息を呑み、ゆっくりと顔をげた。 その瞳には、怯えと、覚悟のようなものが混ざりっていた。

「健さんから、先週の曜に話があったわ」

私の言葉に、美穂の表が瞬で凍りついた。

「健さんから……?」

「ええ。あなたと別居していること、婚調を起こしていること、全部話していたわ」

美穂の唇が刻みに震え始めた。 彼女はテーブルののグラスを倒しそうになりながら、を乗りした。

「あの……子さんに、何を言ったんですか? 私のことを、何て……」

「聞きたい?」

私はややかに微笑んだ。

「あなたが社夫の座目当てで言い寄ってきた、計算い女だって言ってたわ。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: