"二年間買い続けた夫の浮気相手" 第12話
美穂に私のショップのURLを見せて嘲笑っていた男が、今度はで私の成功を嗅ぎ回っている。
「それが、あなたに何か関係ありますか」
「いや、関係ないってことはないだろ。俺たち、も夫婦だったんだからさ。おが元気でやってるなら、元夫としてもしたっていうか……」
「健さん」
私は彼の言葉を遮った。
「用件は何ですか。度と私のに現れない約束で、婚協議にサインしたはずです」
話の向こうで、舌打ちの音が微かに響いた。 健の取り繕った声の奥から、彼本来の苛ちが滲みてくる。
「……相変わらず、げのない物言いだな。おそういうところ、本当に変わってないよ」
ため息混じりにそう言った、健は急に声をく落とした。 どこか湿り気を帯びた、れみを誘うようなトーンに切り替わる。 結婚していた頃、彼が浮気や使い込みをごまかすに、いつも使っていた声の調子だった。
「実はさ……俺、今、あいつと別れる話をめてるんだ」
指先が、机の端をく掴んだ。
「あいつ……田美穂だよ。おもってるだろ。あの女と、今、完全に別居しててさ」
私は何も答えなかった。 健は、私の沈黙を「続きを促している」と勝に解釈したのか、堰を切ったように喋り始めた。
「最初から、違いだったんだよ。俺もさ、あの頃は仕事のプレッシャーがすごくて、精神に参ってたんだ。
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そこにあいつが巧みに入り込んできて……ほら、若い女特の、計算さってあるだろ? 社の妻の座が欲しいだの何だのって、甘い声してすり寄ってきてさ。俺も魔が差したっていうか、惑わされちゃったんだよ」
吐き気がした。 元に当てたスマートフォンの受話から、腐敗したが流れ込んでくるような錯覚を覚える。
「結婚してみたら、とんでもない悪妻だったよ。遣いは荒いし、事はろくにしないし、何か言えばすぐヒステリーを起こして皿を割る。子供ができてからも全然母親らしくならなくてさ、俺の悪を所に言いふらしたりして……本当にがおかしいんだ、あいつは」
健はくため息をつき、信じられない言葉を平然とねた。
「今になってうよ。子は本当にしっかりしてたし、俺をててくれてたんだなって。病気になったも、もっと俺が支えてやればよかったって、ずっと悔してたんだ。あのは俺もパニックになってて、つい酷いことを言っちまったけど……あれは本じゃなかったんだよ。全部、あいつに庭を壊されて、追い詰められてたせいなんだ」
――全部、あいつのせい。
ので、カチリと何かが噛みう音がした。
の病。 麻酔から覚めたばかりの私を見ろし、この男は何と言ったか。
『俺たちが婚することになったら、それは全部おのせいだからな』 『子供も産めない女を養う義理はない』
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あのは、病気になった私のせいにした。 子供が産めなくなった私の責任にして、自分を被害者の位置に置いた。 そして今は、美穂のせいにしている。 自分が若い女にをして庭を壊した事実を、すべて「女の計算さに惑わされたれな男」の物語にき換えている。
この男は、何も変わっていない。 最初から最まで、自分の選択に責任を持ったことなど度たりともないのだ。
「……それで?」
私は氷のようにたい声で尋ねた。
「私に何を求めているの? 同? それとも、よりを戻そうとでも言うつもり?」
健がごもった。
「いや……そういうわけじゃ……まあ、もし子さえ良ければ、たまには飯でもいながら、昔みたいに話でもできないかなって。お互い、になったんだしさ。あいつとの婚調が終わったら、俺も軽になるし……」
「美穂さんとのに、お子さんがいるわよね」
私の淡々とした問いかけに、健の息が止まった。
「……あいつから聞いたのか?」
「答えて。男の子がいるんでしょう」
「……翔太のことか。あいつは俺が引き取るつもりだよ」
健の声から、先ほどまでの湿っぽさが消え、急に酷な響きが戻ってきた。
「あんな緒定な女に、子供を任せられるわけがないだろ。調でも俺が親権を取る。あいつには円も養育費は払わないし、度と子供には会わせない。
自する能力もないくせに気ばかり言ってきたんだ、痛い目を見せてやらなきゃ分からねえんだよ」