みかん小説
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"二年間買い続けた夫の浮気相手" 第11話

健に浴びせられた「おはもう女じゃない」という言葉の棘を、ひとつひとつ自分ので引き抜いてきたつもりだった。

だが、それはただ傷のに包帯を何にも巻きつけて、見ないふりをしていただけだったのだ。 美穂というが目のに現れただけで、包帯はいとも簡単に引き裂かれ、血が滲みしてくる。

「……どうして、今さら」

暗ので呟いた声は、っぽく掠れていた。 美穂が健から暴力を振るわれようと、息子を奪われそうになっていようと、私には何の関係もない。 自業自得だ。の庭をで踏み荒らした女が、同じ男に踏み躙られているだけの話だ。 胸がすくような結末ではないか。因果応報を絵に描いたような転落ではないか。

そう自分に言い聞かせても、胸の奥に広がるのはえ切った虚脱だけだった。 などどこにもなかった。 ただただ、自分がかつて信じ、を預けていた結婚活というものが、どれほど底の浅い、汚れた沼だったのかを改めて突きつけられたような、やりのない屈辱だけが残っていた。

は丸がらなかった。 分だけをにし、汗で湿ったシーツので、私は過の断片を悪のように見続けた。 妊治療のクリニックのい待。 度も付き添ってくれなかった健のろ姿。

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「仕事が忙しい」と言いながら、帳にき込まれていた嘘の張予定。 そして、あの病の乾いたドアの音。

目の朝、汗が引いてようやく平に戻った、部の空気がしだけ澄んでじられた。 シャワーを浴び、作業机に向かってパソコンをく。 溜まっていた注文を淡々と処理し、発送用の伝票を印刷した。 指先をかしているうちに、しずつ常の輪郭が戻ってくる。

美穂のアカウントは、予告通り完全に遮断してある。 あの切れも、引きしの奥にしまい込んだままだ。 これでいい。私は私の活を守る。あのに関わる理由は、どこにもない。

そうを決めて、発送用の箱にテープを貼っていた、曜の夜過ぎのことだった。

作業机の片隅に置いていたスマートフォンが、く震えた。

画面に表示されたのは、登録されていない桁の固定話の番号でも、ネットショップの問いわせ通でもなかった。 見覚えのある、けれど度も画面に浮かびがることのなかった、携帯話の番号。

指先が、ピタリと止まった。

ディスプレイのが、規則に点滅している。 着信拒否にしていたはずだった。 だが、婚の際に弁護士を通じてやり取りを終えた、私は健の連絡先をスマートフォンから消しただけで、個別の着信拒否設定を解除したまま種変更をしていたことに、その初めて気づいた。

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胃の底が、キュッと収縮する。 無して切ることもできた。そのまま源を落としてしまえば、度と鳴ることはない。

けれど、私の指は、画面の緑の通話ボタンをスライドさせていた。

逃げたくなかった。 今の私が、あの男の声つに怯えて震えているような姿を、自分自に見せたくなかった。

通話をに当て、私は何も言わずに沈黙を守った。 スピーカーの向こうから、かすかな擦れの音と、居酒か何かのざわめきが漏れ聞こえてくる。

「……もしもし。子か?」

と、まったく変わらない声だった。 しく、どこかを見すような響きを含んだ、に慣れ親しんだ夫の声。

私はを完全に削ぎ落とした声で、く返した。

「何の用ですか」

話の向こうで、健がさく息を呑む気配がした。 それから、わざとらしいほど調子のいい、軽な笑い声が返ってきた。

「なんだよ、ずいぶんたいな。元気にしてるか? 急に話して悪かったな」

「用件がないなら切ります」

「待てよ、切るなよ! ちょっと話があるんだ」

健の声がし焦りを帯びた。 背景の雑音がしのく。席をって、のか廊にたようだった。

「……実はおのショップ、見かけたんだよ。SNSでさ。なんか、ずいぶん評判がいいみたいじゃないか。アトリエも構えたんだってな」

背筋に、たいものがった。

あの男も、私の向を見ていたのだ。

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