"二年間買い続けた夫の浮気相手" 第8話
私の臓が、嫌な音をててねた。
「私も、緒に笑いました」
美穂は線を逸らさずに、私を真っ直ぐに見据えた。
「ざまあみろっていましたよ。奥さんから夫を奪って、私が勝ったんだって、あのは本気で信じてましたから。だから、注文したんです。あなたがどれだけ貧相なものを作って、どれだけ惨めに必になってるか、この目で見て、嘲笑ってやろうとったんです」
容赦のない言葉だった。 オブラートに包むことすらしない、々しい悪。 けれど、その悪があまりにも剥きしだったからこそ、私は息を呑むことしかできなかった。
「……そう。それが、あなたの本性ね」
私が絞りすように言うと、美穂は力なく首を振った。
「ええ、そうです。最悪でしょう? 反吐がるほど汚い女ですよ、私は。でもね……」
美穂は線を、自分の胸元へと落とした。
「届いたんです。数に、さな茶封筒が」
彼女の声が、微かに震え始めた。
「をけたら、千円ちょっとの、さな真鍮のペンダントが入ってました。歪で、っぽくて、どこにでもあるようなもの。でも、ものすごく丁寧に、傷ひとつ付かないようにいで何にも包まれていて……そのに、きのカードが入ってたんです」
私は、あの夜のことをいした。 え切ったアパートので、震えるでいたカード。
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「『見つけてくださって、ありがとうございます』って。『あなたの毎が、しでも穏やかでありますように』って、綺麗な字でかれていて……」
美穂の唇が、引きつるようにいた。
「あのの午、私、健さんに殴られたんです」
考が、瞬止した。
「……何?」
「活費のことで、文句を言ったから」
美穂は淡々と、まるでの来事を語るかのような調で続けた。
「結婚して緒に暮らし始めた途端、健さんは活費をほとんど入れてくれなくなりました。会社の資繰りが苦しいとか何とか言って。私が『話が違う』って詰め寄ったら、胸ぐらを掴まれて、リビングの壁に突きばされて、頬を平で叩かれました。『誰のおかげで暮らせてるとってるんだ、の妻は文句ひとつ言わなかったぞ』って鳴られて」
美穂の瞳の奥に、暗いが揺れていた。
「頬が腫れて、痛くて、悔しくて、でアパートのに座り込んで泣いてたに、ポストにあなたの荷物が届いたんです」
彼女は両で顔を覆い、く息を吐きした。
「けた瞬、にたくなりました。私が庭を壊して、夫を奪って、幸のどん底に突き落としてやったはずの女から、『あなたの毎が穏やかでありますように』なんて言葉が届いたんですよ? 笑えるでしょう? 皮肉にも程がある。嘲笑いにいったはずの相から、その、世界で番優しい言葉をかけられたんです」
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「だからって……」
私の喉から、抗議の言葉がかかった。 だが美穂は、それを遮るように言葉をねた。
「捨てられなかったんです、そのカードが。健さんにられないように、鏡台の引きしの奥に隠して、何度も何度も読み返しました。それから、あなたのショップを毎見るようになりました。あなたが商品の説文にく、些細な言葉……『のでも、しだけを向けるように』とか、『傷ついたには、自分を番に甘やかしてください』とか……そういう言葉を、画面越しに貪るように読みました」
美穂の声が、次第にを帯びていく。 それは懺悔などではない。 もっと執着に満ちた、歪んだ告だった。
「ヶ目も買いました。ヶ目も買いました。買わなきゃいられなかったんです! 健さんと暮らせば暮らすほど、あの男がどれだけ嘘つきで、どれだけ酷で、どれだけ自分勝なかが分かってきた。に帰ってこないが増えて、私のお腹に子供ができても、病院に度も付き添ってくれなくて……! そんな毎ので、あなたがしずつを向いて、しいアクセサリーを作って、きていこうとしている姿だけが、私の唯の支えだったんです!」
「やめて!」
私は叫んでいた。 両でを塞ぎたくなるような、激しい嫌悪が全を駆け巡った。
「勝なこと言わないで! 何が支えよ! 何が唯のよ!」
私は美穂の胸ぐらに掴みかかりそうになるのを、必で拳を握りしめて押し留めた。