"身重の私を捨てた夫の誤算" 第22話
私はにうずくまるの背を、静かに見つめた。
「けれど、それは優しさではありませんでした。ただの、私のさでした。波をてることを恐れ、傷つくことを恐れ、夫の嫌を損ねないために、私は自分の名を差しし続けた。……奪われることに慣れてしまったは、相に『奪うことが当然の権利だ』という錯覚を植え付けてしまうのです」
私の声は、震えていなかった。 自分の過の過ちを、自らの言葉で引き受けるの、確かな響きを帯びていた。
「私の沈黙は、夫の傲を育て、やがてそれは国を巻き込む巨な嘘へと膨れがりました。ですから――私は今、この壇に、元夫の卑劣さを暴き、復讐するために来たのではありません」
私はお腹にを当て、会のすべての々に向けて告げた。
「私自の、の沈黙を終わらせるために来ました。奪われた名を取り戻し、これからまれてくる私の命に対して、母親として恥じないき方を始めるために、ここにっています」
沈黙が、議を支配した。 拍も、歓声もなかった。 けれどそこには、の女性が自らの過の鎖を断ち切り、尊厳を取り戻した瞬に対する、圧倒な敬に満ちた静寂がしていた。
議が、く、静かに腰を折った。
「……よく分かりました、堂博士。あなたの勇気ある証言と、卓越した鑑定に、より謝申しげます」
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カン、と槌が鳴った。
「野システムズ社との調達契約を即解除し、同社および野氏に対する特別背任および偽計業務妨害の調査を始します。本の査問を終いたします」
終わった。
その瞬、腹部をこれまでにない鋭利な激痛が貫いた。
「っ……」
呼吸が止まり、界がく弾けた。 温かい液体が、太ももを伝って流れ落ちていくのをじた。
破だった。
「宮子さん!」
神崎が叫び、壇から駆け寄ってきた。 同に、控えていた医師と護師たちがストレッチャーを押して議へと崩れ込んでくる。
「破しました! 薬効が完全に切れています!」 「陣痛隔、分を切っています! 今すぐ搬送してください!」
騒然となる会の、私はストレッチャーのに横たえられた。 ざかる識ので、議のへと運ばれていく私の界の隅に、からいがってきたの姿が映った。
は、警備員のを振り解き、よろめく取りでストレッチャーを追いかけてきた。
「み……宮子……!」
その顔は涙とでぐしゃぐしゃだった。 彼は私のストレッチャーの柵にすがりつこうとして、神崎に厳しく押し戻された。 それでもは、剥きしの絶望をわにしながら、私の顔を覗き込んできた。
そのからたのは、謝罪でも、子どもの配でもなかった。
「宮子……俺は……俺はこれから、どうすればいいんだ……?」
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震える唇から漏れたのは、底れない依の言葉だった。
「俺は……もう度と、おに技術のことを……教えてもらうことは、できないのか……? もう度だけ……俺にコードのき方を……」
私は、酸素マスクのから、れな元夫を見つめた。
最まで、このはそうだった。 失った妻を惜しんでいるのではない。 失った庭を悔やんでいるのでもない。 ただ、自らの無能を埋めてくれていた「万能の具」を失ったことが、恐ろしくてたまらないのだ。
私は、微かに首を横に振った。 そして、かすれた声で、永の別れを告げた。
「……のに教わるか、自分でから学びなさい」
の目が、絶望で見かれた。
「ただ……その相はもう度と、私ではありません」
「宮子……宮子ォッ!」
ストレッチャーがりし、い扉の向こうへと消えていく。 取り残された廊で、に崩れ落ちて号泣するの叫び声は、やがて急速にざかり、完全に聞こえなくなった。
激しい痛みの嵐の向こうに、眩いが満ちていた。
「が見えてきましたよ! 宮子さん、息を吐いて! に、そう!」
医師と護師の声が、のように響く。 私は分娩台のすりを爪が割れるほどく握りしめ、最の力を振り絞ってお腹を押しした。
まれておいで。 もう、誰もあなたを傷つけさせない。 嘘のない、の満ちた世界へ――。
オギャアアッ、オギャアアッ――!
張り詰めた分娩の空気を切り裂いて、く、澄み切った産声が響き渡った。