"身重の私を捨てた夫の誤算" 第15話
「夫婦の縁は切れたかもしれない。でも、血の繋がりは消せないだろうが! 父親が国を欺いたペテン師として逮捕されて、会社を潰したなんてことになったら、これからまれてくるこの子がどんな目で見られるか分からないのかい!? 『犯罪者の子』ってろ指を指されてきることになるんだよ! あんた、母親なら子どもの将来を守りたいとわないのかい!?」
子どもの将来。 その言葉が、吉のから発せられた瞬、私の胸ので何かが完全に凍りついた。
昨まで、この子は「汚い孤児のガキ」と呼ばれていた。 アスファルトのでペンダントを踏みにじりながら、「おもお腹のガキも々になって消えちまいな」と吐き捨てたのは、ならぬこの女だった。
それが今、自分の息子の破滅を回避するための、最も都のいい盾として「孫」を利用しようとしている。
「野さん」
私は静かに、けれど部の空気を切り裂くような声で言った。
「あなたは、私の能力をってここに来たのですね」
「え……?」
「私が国のシステムの基盤を設計しただとり、副臣がをげるほどのだとったから、こうして級な産を持って、をげに来た。違いますか?」
吉はごもり、線を逸らした。
「そ、それは……あんたがそんなに優秀なだとはらなかったから……」
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「ええ。らなかったでしょうね。が隠していましたから」
私は吉の目を真っ直ぐに見据えた。
「でも、あなたにとって私は、今も昔も何も変わっていないわ。昨までは『にならない役たずの居候』だった。そして今からは『息子を破滅から救うための、都のいい具』に変わっただけ。……あなたは度たりとも、私をのとして見たことはない」
「なっ……何を失礼なことを!」
吉の顔に、かつての傲な義母のが覗いた。
「こっちはにてやってるんだよ! 寄りがここまでをげて、過のこともに流してやろうって言ってんだ! 調子に乗るんじゃないよ! 、うちの飯をわせてやった恩を忘れたのかい!? 過に何回もを助けてきたんだろう!? だったら、最にもう回だけ助けたって減るもんじゃないだろうが!」
『最にもう回だけ助けたって減るもんじゃない』。
その言葉を聞いた瞬、私は乾いた笑いを漏らした。 本当に、この親にしてこの子ありだった。 彼らの辞には、「の尊厳を尊する」という概がしないのだ。 が差しした善や忍耐を、すべて「自分たちが享受して当然の権利」だと錯覚し、相がそれを拒絶すると、今度は「恩らず」となじる。
私はゆっくりとちがった。 腹部の痛みを隠しながら、吉を見ろす。
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「お引き取りください」
「宮子さん!」
「度と、私のに現れないで。そして、お腹の子のことも度とにしないでください。この子には父親はいません。まして、あなたのような祖母もしません」
「な……なんだって……!?」
吉が顔を真っ赤にしてちがろうとしたが、背に控えていたのSPが、無言のまま彼女の肩をからく押さえつけた。
「退願います」
SPのく、無を言わせさぬ声が響く。
「しなさいよ! 宮子! あんた、本当にを見殺しにする気かい!? 悔するよ! あんたみたいなのない血女、バチが当たるに決まってるんだ! 宮子ォッ!」
喚き散らす吉は、警備員たちによって引きずられるように面談から連れされていった。 バタン、とい防音扉が閉まり、廊の声が完全に遮断される。
部に残されたテーブルのには、付かずの級漢方の桐箱だけが、滑稽に取り残されていた。
「……災難だったね」
神崎が静かに言った。
「あのようなにをかける必は微もない。君の判断は完全に正しいよ」
「……分かっています」
私は震える指先をカーディガンのポケットに入れた。 そこには、潰れたロケットペンダントの破片が入っている。 胸の奥に広がっているのは、りではなかった。 ただ、という歳を、あのような々の顔を窺い、自分を殺して浪費してしまったことに対する、い、い悔だった。
病に戻ったのは、午を回った頃だった。